東部クラホベ方面でもロシア軍が人海戦術で猛攻 「危機的状況に近づく」
ウクライナ東部ドネツク州ブフレダルの廃墟から北へ向かってロシア軍第20親衛自動車化狙撃師団の大軍が進撃している。1万人規模ともみられるその軍勢は、2000人規模の疲弊したウクライナ軍第79独立空挺強襲旅団を圧倒的な数に任せて粉砕すべく、猛攻をかけている。 【画像】「状況は危機的になりかけている」と警鐘を鳴らすウクライナ軍のドローン操縦士 ロシア軍が狙っているのは、第79空挺強襲旅団をドネツク市の西30kmあまりのイルリンカ村から押し出すことだ。イルリンカとその周辺の集落を落とせば、ロシア軍は北上し、ドネツク州南部のウクライナ側の防御で要になっているクラホベ市を半包囲できる可能性がある。 ウクライナ軍のドローン(無人機)操縦士、Kriegsforscher(クリークスフォルシャー)は、第79空挺強襲旅団は2週間ほど前から「敵の大規模な攻撃にさらされてきた」と指摘し、「状況は危機的になりかけている」と警鐘を鳴らしている。 第79空挺強襲旅団の空挺兵らとドローンチームはこれまでに、第20自動車化狙撃師団の車両を多数撃破してはいる。撃破した車両は当初は新造のBMP-3歩兵戦闘車が多かったが、それが枯渇してきたとみられ、代わりに旧式のBMP-2歩兵戦闘車やMT-LB装甲牽引車が目立つようになった。累計の撃破数は数十両にのぼるのかもしれない。 第20自動車化狙撃師団がイルリンカへの途上で車両に被っている甚大な損害は、戦線全体でのロシア軍装備の記録的な損害の一因になっている。OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのアンドルー・パーペチュアは2日だけで、撃破されるか損傷するか、もしくは遺棄されたロシア軍装備を206点も確認している。同日に確認されたクライナ軍装備の損害は49点にとどまっている。 だがロシア軍は、勝利を収める戦法を見つけており、土地を獲得するために装備や人員の犠牲をいとわない姿勢なのも明らかだ。 ウクライナのジャーナリストであるスタニスラフ・アセーエフは、この戦法は単純だが効果的だと解説する。アセーエフはソーシャルメディアにこう書いている。 「ロシア軍は引き続き『袋』戦術を首尾よく用いている。この戦術は、われわれの陣地に3面から回り込み、退却のための細い『口』だけ残しておくというものだ。この形になると、戦闘態勢にある部隊でさえ、包囲されるのではないかとパニックを起こしてしまうことが多く、それは部隊の撤退につながる」