SpecialThanksが語る、パンクなアルバムを作った理由、フルアルバムとCDへのこだわり
なんで作品を買って欲しいって思うのか?もすごい考えてる期間だった
─繋がりで言うと「Romance」からの「Hey! Sunny!」もそうですよね。 Misaki:そこ、こだわりました! こだわったっていうか、もうこれしかないよねって。 ─それありきで曲を作っていたんですか? Misaki:別々に作ってました。「Hey! Sunny!」が先にできて、その後に「Romance」なんですけど、なんで<Hey!>を入れることにしたのか忘れちゃった。とにかく最後の<Hey!>は「Hey! Sunny!」が映えるように、めっちゃ男らしい感じでこだわりました(笑)。 よしだ:「Romance」の<Hey!Hey!Hey!>と3回言うガヤっぽい<Hey!>から、本物の<Hey!>はこちらですよっていうイメージです。 Misaki:ゴツくなるように何回もコーラスを入れたんだよね。 ─どの曲をどこの順番に配置するかのパズルは、かなり大事にされてますよね。 Misaki:そう! 曲順にこだわるのは、アルバムの醍醐味だなと思ってて。 よしだ:最近は、特に若い子の間でシングル曲を聴くのが流行ってるらしいじゃないですか。アルバムでもこの曲とこの曲しか聴かない、みたいなことが多いらしいですけど、やっぱりCD世代から1曲目から順に聴いていきたいと思っちゃう。さっきの「New future」から「地球防衛軍」の繋がりとか、そういうのを感じられるのがアルバムの魅力で。 Misaki:私はアルバムを頭から聴くことが多くて。やっぱり楽曲の並びで相乗効果もあったりして、それが大事なのでそこは自然と大事にしてた。意識しすぎず、当たり前のようにやってましたね。あとは、昔から何曲入りのアルバムにするかを決めてから曲をはめていくことが多くて。アルバム1枚を通しての流れはずっと大事にしてます。 よしだ:最初に作りたいような曲を作って、途中で「前半のここが足りない」みたいなに思ったら、そういう曲を作って足りないピースを埋める感じでしたね。 Misaki:「POWERFUL POWER」は最後に追加した曲なんですけど、これはまさに「ここに、こういう曲が欲しい」と思って作りました。 SpecialThanks(Photo by yuuki honda) ─そんな後発で「POWERFUL POWER」で生まれたのはすごいですね。 Misaki:おお! どんな印象でしたか? ─すごく下向きというか、長いキャリアのバンドがここまで“歌うこと”をストレートに表現しているのが面白いなって。そこに強い意味を感じましたね。 Misaki:あ~、嬉しい! 私の中では12曲で完パケしてて、出し切って空っぽだったんですよ。でも「もう一曲絶対ここに欲しい」と言われて、えー!って感じだったんですけど、空っぽだったからこそ「その中で何を言いたいか」みたいなのが、すごいシンプルに生まれてきて、それが曲になったなって感じがしてます。 よしだ:最初は「これ以上、何も言いたいことがない!」と言ってたよね。 Misaki:ここ何年間の思いとか全部出し切ったから「本当に言いたいことがない」ってなった。いや、いつもないんですよ。もう言いたいことがあんまりない。そんな中で、さらにマジで何もない状況から生み出す時に「何を歌えばいいんだろう」と思ったら、すごいシンプルな言葉になりました。この曲はメロディーと歌詞を同時で作りましたね。もうパーって出てきたのを録って、それをみんなに送った感じ。 ─「POWERFUL POWER」が届いてどう感じましたか? よしだ:「アップテンポの曲が欲しいから」と言っていたので「ピッタリでめっちゃいい!」となりましたね。今回も「やっぱりいいメロの曲を持ってきてくれるわ!」って感じでしたね。「もう歌えることはない」と言いながらも、彼女は無限に曲が出てくるので。 ─そんなよしださんの推し曲は「kirei」だとか。 Misaki:うわ、すごい知ってくださってる! よしだ:ヤバいね! そう、「kirei」がめっちゃ推し曲なんです。この曲はメロがめっちゃ良くて、意外とドラムもめちゃめちゃ考えてて。 Misaki:意外と(笑)? よしだ:速い曲は手数が多くて難しい一方、歌モノって結構シンプルなドラムが多い。だからこそバスの位置もそうですし、少ない手数の中でどこでどう叩くかをめっちゃ考えて作ったのが、この曲で。そこに自分でも満足してる。このメロをいい感じに引き立てられてるし、曲全体の中でのバリエーションも意外とあるなっていうものを作れた気がしてて、それが気に入ってるポイントですね。 Misaki:アレンジもしっとりしてる曲だけど、できるだけパンクになるような演奏だったり、ギターのコードだったりを意識したよね。 よしだ:今回のアルバムはパンクをテーマにしてるからね。この曲、最初はエイトビートで静かに叩いていたけど「パンクなんだから、もうちょっとガツンって叩いた方がいいんじゃないの?」とエンジニアさんから言われて。「確かにこっちの方がいいわ」と言って結構ガチャガチャ叩いたよね。 Misaki:レコーディング中も「これはパンクかどうか?」とか「これはちょっとパンクじゃないよね! こっちのがパンクっぽいよね」と言ってました。 よしだ:「そんなオシャレっぽくやらなくていいよ。パンクなんだから、もっとガシャガシャやっちゃって」みたいにすべての軸をパンクに置いて。 Misaki:このコードだと頭良すぎるな、とか(笑)。 よしだ:それで「kirei」もハットを強めに叩いていてね。 Misaki:最初のデモから比べたら、結構変わった曲だったね。 ─ほかの曲と比べて「kirei」の歌詞はナイーブな面がかなり出ていますけど、これはどういう状況で作られたんですか。 Misaki:実家に帰って自分の小っちゃい頃の写真を見たら、すごい無邪気に笑っていて。まだ汚れを知らない綺麗だった頃というか。みんなもそういう時があったよなと思って。小さい頃は自分で服を着れないじゃないですか。着せてくれた人がいて、写真を撮ってくれた人がいて。写真に映る私の向こう側には、もっと笑ってくれてる人がいるんだよなってことを曲にしたくなったんです。 ─スペサンとして何を歌っていくのかとか、自分ってどういう人間でどういうふうに育ってきたんだっけとか、ご自身を見つめ直す作業が多かったんですかね。 Misaki:あぁ、そうですね。自分は何のために歌ってる?何のためにライブをして、何のためにこのアルバム作って、何で聴いて欲しいのか?とか。なんで作品を買って欲しいって思うのか?もすごい考えてる期間ではありました。 ─Misakiさんの中で、特に気持ちを込めた曲はなんでしょう? Misaki:難しい……本当に難しい。んー、嬉しかったのは「地球防衛軍」のデモとか弾き語りの状態を聴いてもらった時に、全員から「カッコいいね」と言ってもらえて、それがすごい嬉しくて。反応がない場合もあるじゃないですか? 「なんか良さそう」でもなくて「カッコいい!」と言ってもらえたことで、やっぱりそうなんだ!と自信になりました。うーん、「kirei」も好きだし全部好きですけどね。「Hey! Sunny!」は前のメンバーが辞めるタイミングで、私も本気でバンドをちょっと諦めそうになって。その時に……やっぱり人が離れて行くのって悲しいし切ないけど……なんか、それでも、ずっとライブに来てくれたりとか、メッセージをくれたりとか。ファンの……みんなの、そういう言葉にすごい救われたっていうのがあって(目から涙を流す)。そんな感謝の気持ちも込めて書いた曲なので、やっぱりこれは特別な曲です、すごい……。思い出しちゃった。 よしだ:うんうん。 Misaki:さっきのインタビューも泣きそうだったのに、また涙が出てきた。ティッシュないよね?(笑)。ふふふ、乾かします乾かします!(顔を上げて手で仰ぎながら、涙が乾かそうとする)。 ─あ、ティッシュありますよ。 Misaki:すみません、ありがとうございます。なので、「Hey! Sunny!」は特別枠ですね。 ─曲を書いた時の状況とか心境は覚えてます? Misaki:それこそ本当に溺れてた。なんか、ちょっと暗闇の中にいた感じ。だけど……曲と共に前向きになれて。みんながいてくれたから、この曲ができたのを本当に感じながら、またここからやってくぞっていう気持ちの時だったんです。まさに最初から最後まで歌詞の通りって感じで、みんなのおかげでだんだん前向きになっていけた。そんな状況でした。暗闇から救ってもらえた時の曲。 よしだ:俺はそういうふうに思っていたのは知らずに、単純にめちゃめちゃポップでキャッチーでいい曲だなと思って。これは誰が聴いても「いいな」って思える名曲を持ってきてくれた、ぐらいの感じでした。 Misaki:ちょうど落ち込んでた時に『ONE PIECE』をめっちゃ読んでいて。『ONE PIECE』の主題歌に合いそうな曲を作ろう、みたいな感じで書いたのでBPMとかはアニソンに合うテンポにしてます。しかも、尾田(栄一郎)先生に手紙を書いたんですよ。「この曲を聴いてください」って。 ─えー! Misaki:スペサンのファンクラブが「SUNNY CLUB」という名前で、お客さんのことをSUNNYちゃんと呼んでいるんですね。で、『ONE PIECE』のルフィーたちの乗っている船がサニー号という繋がりもあって。「『ONE PIECE』好きなバンドマンも多いから『Hey! Sunny!』っていう曲を作ったら良いじゃん」みたいに言われて、タイトル先行で作りましたね、 よしだ:あ、そんなこと言われたんだ! Misaki:そう! ライブの打ち上げかライブハウスで言われて、確かにいいなと思って。速攻<Hey! Sunny! ララララ~>ってボイスメモに録音して、そこから派生して作りました。 ─「Ringling Go!」に関しては、思いがけず採用されたんですよね。 Misaki:あ、そうです。詳しー! よしだ:ハハハハ! Misaki:「Ringling Go!」は朝方に遊び半分で書いた曲で、一応送っとこうと思って。 よしだ:朝起きたら5時半ごろにLINEが来てて。え、そんな時間に?と思って聴いたら「リンリンリンゴ リンリンリンゴ~」と声が入ってて、なんだこの曲は!?とビックリして。途中で「神様おはよう~」と歌っているのも、めちゃくちゃ面白いと思ったんですよ。それで「これを曲にしよう!」と思って、デモは30秒くらいだったんですけど、それをDTMでうまいこと組み合わせて作って。 Misaki:1コーラスじゃなくて1曲フルで作ったよね。 よしだ:とはいえ、俺もギターを弾けるわけじゃないんで「ここはギター」という感じで枠を作って、「ここから2Aが始まります」みたいにしたり、<神様おはよう>の歌詞があるから最後は<神様おやすみね>にしてほしい、とリクエストしてね。 Misaki:サポートの子も「この曲いいじゃん!」と言って「え、いいの? やるの?」って感じでした。 よしだ:このアルバムで一番早くでききたのが「Ringling Go!」かもしれないです。2時間ぐらいで曲の構成を作ったよね。 Misaki:リンゴをテーマにした曲を書きたかったんですよ。なんか始まりっぽいじゃないですか。そもそも1曲目として考えていたんですよ。 よしだ:元々は「OH! LOVE! 幻!」を1曲目にするつもりだったんですけど、この曲が届いて、いやコレだなって。めっちゃ衝撃を受けました。