今となってはこのバンド名を守りたい、みたいなモードがある

─驚きと言えば、個人的には「30s PUNKS」でしたね。30代になってパンクを歌う覚悟も感じたし、演奏や歌もたぎっていて。 よしだ：パンクスって人それぞれに捉え方があるし、全部が正解だと思うんですけど、俺の中のパンクスは全員が同じ空間で目を合わせて一発撮りするイメージなんですよ。今ってそれぞれが別々にレコーディングをして、間違えたらそこだけ録り直すけど、みんな一緒に録る良さも絶対にあると思って。絶対にこのバンドでもやりたいと思ってて、まさに「30s PUNKS」ならできるなって。「この曲は一発で録らないか？」と言って、クリックも流さずにウワー！って録りました。ギターがコードをちょっと間違えちゃったんですけど、エンジニアさんも「いや、これはこの勢いを大事にした方がいいから、録り直しはせずにこのまま行こう！」と言って。でもさ、音的には大丈夫だったんだよね？ Misaki：うん、むしろカッコいい仕上がりになった。 よしだ：このアルバムの中でも、インパクトの強い良い曲になったんじゃないかなって。 ─「30s PUNKS」をお聴きして改めて質問してみたいと思ったんですけど、お二人にとってパンクってなんですか？ よしだ：うわ―、難しい！　こんなことを言ったら、本当のパンクスから「それはパンクじゃねえよ」って言われそうだけど、俺の中のパンクって“自由”なんですよね。鋲のライダースを着て、髪の毛をツンツンに立てているのがパンクスじゃなくて。スタイルとして自分が自由にいることがパンクかなって。テンポが速いのがパンクとか、遅いのはパンクじゃない。というわけでもないですし、ザ・ビートルズだってめっちゃパンクだと思う。とにかく“自由で好きなように”っていう。「じゃあ、自由でいないことがパンクじゃないのか？」と言われたら、そういうわけでもないんですけどね。「これがパンクだ！」と言ってるものが、パンクでいいんじゃないかな。こんなこと言ったら、パンクスの人に怒られるのかもしれないけど。 Misaki：パンクを知らないウチらが作ったパンクだよね。 よしだ：それが一番しっくりくるかもしれない。自分がパンクだと思ったからパンク。「パンクじゃない？　知らねえよ、そんなもん！　これがパンクだ」っていう。 Misaki：私は信念とか自分が大事にしてるものとか、大切な人を守りたい気持ちとか。あとは、ピュアさですね。綺麗な心もですけど、純粋な気持ちで歌うとか音楽を奏でること。大好きでピュアな気持ちを持ちながら、やり抜くことがパンクかなって。 よしだ：そういう純度の話で言ったら、このアルバムは純度100%でしょ。人が多く関われば関わるほど、「こういう歌詞を入れて」とか「こういうギターの音作りをして」といろんな意見が入るけど、少数大勢で素直に曲が作れたから。 Misaki：純度も鮮度も高い状態でお届けできているよね。 ─GREEN DAYのビリー・ジョーも「パンクは頭をモヒカンにするとか、鋲のベルトを身につけるとかじゃなくて、自分自身でいることがパンクなんだ」と言ってましたよ。 Misaki：おぉ！　（拍手をしながら）すごい！ よしだ：ヤバいね！　やっぱり俺たちパンクだわ！　ハハハハ！ ─10代でスペサンを始めて30代で「30s PUNKS」を作った今、パンクの捉え方って変わりました？ Misaki：私は「パンクって精神的なものがなんだよ、心なんだよ」ってお母さんに教わった時から変わってないですね よしだ：お母さん、めちゃめちゃパンクだわ！ ─え？　なんでお母さんが？ Misaki：ウチのお母さんはロックとかバンクが好きで、お父さんはレゲエが好きで、お兄ちゃんはロカビリー、次男はポップパンクが好きで。家族みんなが音楽好きで、いろいろな曲が家で流れてた感じなんです。中でもお母さんの影響は大きくて。小さい頃、ブルーハーツのライブにも連れて行ってもらったらしいんですよ。あとは、このインタビューが終わった後に観に行くんですけど、パーソンズのライブも小さい頃から連れて行ってもらってて。私が小学生ぐらいの頃、お母さんがインディーズバンドにハマり始めて。ライブハウスにめっちゃ連れて行ってもらって、そこからのメロコアも聴くようになりました。 ─インディーズバンドはどなたを？ Misaki：STOMPIN’BIRDとかDONUTMANが好きで、いろんなところに遊びに行ったし、対バンしたバンドも好きになっていきました。 よしだ：俺、中高生の頃は速いビートがパンクだと思っていて。その頃に比べたら「kirei」みたいな遅いビートでもそこにパンク精神があると思ってるから、そういう意味では変わったかもしれない。 ─よしださんはどういう入り口だったんですか。 よしだ：2つ上のお兄ちゃんがハイスタ、BRAHMANとか90年代のAIR JAM世代や、メロディックなHAWAIIAN6、青春パンクのSHAKALABBITS、THE BOOGIE JACKなんかを教えてくれたことで、どっぷりハマって。そこから派生してlocofrank、dustboxとかのメロコアも大好きになって。「ツービートカッケー！　エイトビートはカッコ悪い！」みたいな中学生でしたね。日本のそういうバンドばっかり聴いてました。 Misaki：（よしだは）シングルペダルで頑張ってるもんね。 よしだ：ハイスタのツネさんを始め、locofrank にいたTatsuyaさん、当時だったらNorthern19の馬場（豊心）さん、TOTALFATのBuntaさんとか、みんなシングルペダルのみでツービートを叩いていて。俺はその美学をいまだに貫いていますね。 SpecialThanks（Photo by 三浦麻旅子） ─話を聞いていると、そんな2人が『PUNK RECORDS』を作ったのは、ものすごく正道な感じがしますね。 Misaki：色々あったけど、やっぱこれだよね！っていう素直な気持ちで作れましたね。さっき、よしだが話しましたけど、スペサンに対してデビュー当時のメロコアとかパンクのイメージを持っているリスナーさんが多いから「そういう方向性に持って行こう」って話もあったんですけど、それだけじゃなくて。１周回って「やっぱこれだよね、楽しいよね」と思いながらやれてるのが一番いいなって。 よしだ：リスナーが求めてるから、それをやろうもあるけど、そこには自分たちの好きもしっかりと入っている。『PUNK RECORDS』を出して、当時のイメージと答え合わせができるかなって。そこも楽しみですね。いろんなジャンルの音楽を出し続けてきて、1周回ってこれでどうハマるかっていう。 Misaki：何より、ライブが楽しみ過ぎる。今回の楽曲はライブで歌うことをかなりイメージしてて。一緒に歌える場所もたくさんあるし、スタジオでも「よしだ、ちょっとお客さんの真似して！」みたいにイメトレもして（笑）。 よしだ：会場で一緒に歌って盛り上がれたら嬉しいよね。 ─最後にいいですか？　今回はアルバム名も曲名も本当に面白いネーミングセンスだなと思ったんですね。で、よくよく考えたらSpecialThanks自体がすごい名前だなって。 Misaki：ふふ、ヤバいですよね！　それは年々思います。 よしだ：ごきげんな名前だよな。 Misaki：すごいですよね。いやぁ、自分でもよくぞ中学3年生の頃にこのバンド名をつけたなって思います。SpecialThanksという名前だからこそ、みんなの人生をカラフルに彩っていけるような音楽であれたらいいなって思ってます。 ─なんで、SpecialThanksにしたんですか。 Misaki：好きなアーティストのCDの裏にSpecialThanksと書いてあったんですね。それで「これをバンド名にしたら、自分たちの名前が載ったことになるじゃん」って。名前を決めた時は女の子３人だったんですけど、ただただテンションを上げたくてつけました。 よしだ：ハハハ、中学生っぽくていいな！ Misaki：もう1つ候補があったんですよ。その時、近所にファミレスができて、みんなファミレスのクルトンが好きだったので「クルトンかSpecialThanksにしよう！」みたいな感じでめっちゃ迷って。 ─両極端すぎますって！ よしだ：うわー、SpecialThanksでよかった。 ─バンドって続けていけばいくほど、バンド名も深い意味を帯びていくじゃないですか。クルトンだとどうしてもなんか……。 Misaki：そっちだったら、もう解散してるかも。 Misaki・よしだ：ハハハハ！ Misaki：SpecialThanksだからこそ、守り抜きたいのはあるね。今となってはこのバンド名を守りたい、みたいなモードがある。これ以上のバンド名が……考えたりもするんです。メンバーが変わるたびに新しいバンド名にして再スタートを切ろうかな、って考えるんですけど、これ以上の名前が見つからなくて。全然出てこなくて、Love&Thanksとかそういう（笑）。 よしだ：結局、Thanksが入ってんじゃん！ Misaki：ふふふ、やっぱり今の名前がいいなってなりました。なんか意味が変わってきません？　当時つけた時のノリとは変わってきて、このバンド名を背負ってるからこそ、本当に感謝が溢れてくるような空間だったり、気づきを自分も得られたり、みんなの気づきになってもらえたり。そういうフェーズに変わってきたなと思います。 ＜リリース情報＞ SpecialThanks 『PUNK RECORDS』 10月23日CD3形態同時発売（配信も同日開始） Type-A（DRR-1002） CD only　 永久仕様盤 16Ｐブックレット　特製ステッカー１枚封入　税込み　3300円 Type-B（DRR-1003） 初回限定盤　 CD+スペシャルライブ音源CD２枚組　16Pブックレット　特製ステッカー　5枚封入　豪華三方背仕様 税込み　4400円 Type-C（DRR-1004） 初回限定DX盤　完全限定生産セット　 CD+スペシャルライブ音源CD２枚組＋ライブ音源3曲入りプレイボタン（充電ケーブル　イヤホン付き）　16Pブックレット　特製ステッカー13枚全種類封入　豪華三方背仕様 税込み　6600円 ＜ライブ情報＞ PUNK RECORDS　release tour 2024-2025 2024年10月27日（日）千葉 LOOK 2024年11月8日（金）福岡 Queblick 2024年11月9日（土）宮崎 LAZARUS 2024年11月17日（日）北海道 札幌KLUB COUNTER ACTION 2024年11月24日（日）新潟 LiveHall GOLDEN PIGS BLACK STAGE 2024年12月7日（土）神奈川 横浜BuzzFront 2025年1月12日（日）宮城 仙台ROCKATERIA 2025年1月18日（土）広島 ALMIGHTY 2025年1月19日（日）兵庫 神戸 太陽と虎 2025年1月25日（土）大分 club SPOT 2025年1月26日（日）香川 高松TOONICE 2025年2月8日（土）愛知 名古屋UPSET 2025年2月9日（日）大阪 心斎橋Pangea 2025年2月24日（月祝）東京 渋谷Spotify O-WEST※TOUR FINAL チケット発売は年内分のみ9月7日（土曜日）午前10時からスタート Official HP：