あなたの給料どう決まる? リクルート、人事の「マル秘情報」調査...査定時の昇給から給与テーブルまで
企業は社内の人間より、社外の人材に魅力的な賃金を提示する傾向がある
――それにしても、最高評価の査定時の昇給幅が「2%未満」が5割超、「5%以上」が2割超という結果はさみしい気がします。「最高の評価」なのだから、もう少しアップできないのでしょうか。 津田郁さん 今回の調査によって得られたデータは、社内における昇給幅ですが、この数値を考えるうえで、参考になる別のデータがあります。 リクルートでは転職支援サービス「リクルートエージェント」を利用して転職した人々を対象に、転職時に「1割以上」賃金が増えた人の割合を、四半期ごとに分析・集計しています。 最新の2024年7~9月期では、前職と比べて賃金が1割以上増加した人の割合は約36%。統計を取り始めた2002年以降の最高値です。3人に1人は「10%以上」、転職により賃金が増えているのです。 今回の調査とは純粋な比較にはなりませんが、昨今は深刻な人手不足を背景に、企業は社外の人材に魅力的な賃金を提示する傾向にあります。企業の人事担当者はこうした社外の状況を把握しながら、社内での昇給、給与制度のあり方も検討する必要があるのではないでしょうか。 ――つまり、自社の社員の昇給であまり冷遇すると、転職してしまうぞということですね。では、給与制度をどう見直していくべきでしょうか。
給与と評価は企業経営の根幹、従業員や採用候補者に正しく伝える
津田郁さん こちらも別のデータですが、リクルートが全国の企業人事担当者に行った調査では、「賃金・報酬制度を変え、従来のやり方を見直す必要性を感じている」との回答は半数超でした。 その理由を聞くと、2番目に多かったのが「業界や外部労働市場(社外)と照らして、競争力のある報酬水準にしたい」でした。見直しにあたり、自社内だけでなく、社外の相場や業界の水準などを意識している、ということです。 ――結局、いくら頑張っても給料が低ければ、ほかにいくだけでしょう。 津田郁さん そのとおりです。給与制度は、企業経営の根幹となる人事制度です。評価制度も同様ですが、これらがセットになることで経営のメッセージとなりえます。 従業員のどのような行動を評価し、どのようなパフォーマンスに対して賃金や報酬を支払うのか、制度を通じて従業員に伝わるのです。 だからこそ、社外の基準を参考にしつつ、給与や評価制度を一貫して見直し、その内容を従業員や採用候補者に正しく公開して伝えることが求められるのではないでしょうか。 こうした取り組みこそが、多くの企業が人手不足に直面するなか、社内外の人材を引きつける上で重要と考えています。 (J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎) 【プロフィール】 笠井彰吾(かさい・しょうご) リクルート研究員 国会事務局での勤務の後、2019年、リクルートジョブズ(現リクルート)入社。ジョブズリサーチセンター研究員を経て、現職。 津田郁(つだ・かおる) リクルートHRリサーチセンター長 金融機関を経て、2011年リクルート海外法人(中国)入社。グローバル採用事業『WORK IN JAPAN』のマネジャー、リクルートワークス研究所研究員などを経て、現在は労働市場に関するリサーチ業務に従事。経営学修士。