再びトランプ政権へ ウクライナでの戦争は?台湾情勢どうなる 警戒強める各国
2)対中政策でトランプ氏が衝撃発言 台湾有事のリスクは…
トランプ氏の対外政策で、もう一つ注目されているのが対中政策だ。中国の習近平国家主席はトランプ氏に祝電を送り、圧勝を祝福するとともに、「協力すれば得をし、対立すれば損をする」と警告した。 対するトランプ氏は、関税について、中国以外の国からの輸入品に対しては10%から20%。そして中国からの輸入品に対しては関税を60%にするとしている。さらに中国について、「もし中国が台湾に侵攻するなら、申し訳ないが、中国に対して150%から200%の関税を課すつもりだ」と主張。その一方で、軍事力行使の可能性を問われると「必要ないだろう」と述べた。軍事力は行使しないとする発言だった。 峯村健司氏(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)は、このトランプ氏の発言の意味を以下のように分析した。 この発言で最も重要なのは、中国が台湾を侵攻しても、関税しかかけずに、アメリカ軍は派遣しない、と言っている点だ。これは極めて衝撃的だった。中国が台湾を統一しようとする場合に見ているのは一点だけ。アメリカ軍が参戦するかどうかだ。台湾との一対一の対峙であれば、中国は軍事的に十分優勢で、勝てると思っている。トランプ氏が「アメリカ軍を出さない」と発言したことは、台湾有事が早まるリスクがあるとみている。2022年、バイデン氏が「我々アメリカ軍はウクライナに兵を派遣しない」と言った、その約2週間後にプーチン氏が侵略を開始した。それぐらいインパクトがある発言といっていいだろう。 また、習近平氏の祝電も非常に上手くできている。「協力すれば得をする」という言葉は、ディールが大好きなトランプ氏に刺さる。トランプ氏が今一番イヤなものは、中国に対する貿易赤字。中国が例えばアラスカのLNGをいっぱい買ったり、激戦州の農産物をいっぱい買ったりするオファーをトランプ氏にする。その代わり、台湾については中国に任せてくれとささやけば、トランプ氏がこのディールに応じる可能性は十分にある。そうなれば、中国側は一気に台湾併合に向けて動くだろう。 関税の引き上げは、もちろん短期的なインパクトはある。中国経済に影響は出るが、今の習近平体制の政策目標でいうと、「台湾統一」こそが最も重要だ。そのためには、経済の犠牲は仕方ないと思っている。2021年以降、いくら制裁をかけられても大丈夫なように、できるだけ内需で生きていけるように経済政策も変えており、痛手は最小限に収められるのではないか。