《犯罪や不倫の告白からナス嫌いまで》やなせたかしさん発案の「ハガキでごめんなさい」全国コンクールから見えてくる世相
「天国へ行ったやなせたかし先生」に宛てたハガキ
震災復興支援に力を入れたやなせさんは、2013年10月13日に94歳で亡くなった。 安岡事務局長は「これに影響を受けたのか、翌年度は悲しいハガキがたくさん寄せられました。読みながら泣きそうになったのを覚えています」と話す。 開催からちょうど10年という節目にも当たり、「第10回記念やなせたかし特別大賞」が設けられた。選ばれたのは福岡県の中学2年生だ。 〈<天国へ行ったやなせたかし先生、いつまでも悲しんでいて、ごめんなさい。 ぼくは、明るく強く生きていきます。見ていてね。>(第10回記念やなせたかし特別大賞)〉 アンパンマンなどやなせさんが生み出したキャラクターが大勢で涙する絵が描かれていたが、やなせさんが作詞した歌「手のひらを太陽に」を思い出させる文面だ。 その後は、2020年から流行した新型コロナウイルス感染症にも影響を受けた。安岡事務局長は「やっぱりこの年の応募にも暗さがありました。国に対する文句を書いてきた人もいました」と言う。
なぜか増えた「ナス嫌い」と「プリンを食べてしまった」のごめんなさい
理由は不明だが、年によって増える内容がある。顕著なのが「ナス嫌いでごめんなさい」と「こっそりプリンを食べてしまってごめんなさい」だ。 ナスは「高校生までの年代です。県も学校もバラバラなのに、なぜか多い年があります。子供が嫌いな野菜といえばピーマンやニンジンが定番だったのに、これらはあまりありません」と安岡事務局長は首をひねる。 やなせさんの母校、南国市立後免野田小学校の川村一弘校長に尋ねると、ヒントをくれた。 「品種改良の影響もあるのです。ニンジンは独特の香りが減って、食べやすくなりました。昔は苦かったピーマンも甘くなりました。逆にナスは柔らかい食感を嫌う子が増えています」 多く寄せられる年とそうでない年がある「波」については、川村校長にも分からなかった。 プリンも「アイスクリームやヨーグルト、ゼリーは少なく、なぜかプリンなのです」と安岡事務局長は不思議がる。 安岡事務局長には逆の体験がある。若い頃にプリンではなく、コーヒーゼリーを食べられて、なんと家出をしたことがあるのだ。 「大人になってからの話で恥ずかしいのですが、私の実家は高知県でも山間部にあります。コンビニエンスストアやスーパーといったコーヒーゼリーを売っている店にはかなり遠いのです。就職して間もない頃、風呂上がりに食べようと帰りがけに1個買い、冷蔵庫に入れておきました。ところが、父が食べてしまいました。私は憤慨して家出をし、その後は父とあまり口をきかなくなりました。でも、父はコーヒーゼリーを食べたことさえ記憶していないだろうし、私が家出をしたことも知らなかいと思います。私に『ごめんなさい』のハガキを書いてほしいぐらいなのですが、ハガキ一枚で許してもらおうなんて浅はかだとも思う気持ちもあって……」 たとえ父親であっても、食べ物の恨みは恐ろしい。
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