《犯罪や不倫の告白からナス嫌いまで》やなせたかしさん発案の「ハガキでごめんなさい」全国コンクールから見えてくる世相
目立つ面白いおじいちゃんネタ
家族間の出来事はかなり寄せられる。 「比較的多いのは、不治の病という診断を、どうしても本人に告げられなかったという内容です。『高齢だったので、ショックを受けるより知らない方がいいと思った。でも本当に言わなくてよかったのだろうか』などと後悔の言葉が書かれています。残された時間でやりたいことが出来なかったのではないか、最期の過ごし方はあれでよかったのかと、悩む人が多いのでしょう。これは今でも寄せられます」と徳久さんは言う。 母親の話が多いが、おじいちゃんネタも目立つ。「家族の中では意外に愛されキャラなんじゃないですか。存在自体がすっトボケた感じだし、面白いので」と徳久さんは笑う。 〈<おじいちゃんへ 小さい時、おじいちゃんの頭に変な紙を張りつけて ごめん。 気づかなかった おじいちゃん 散歩に行って 女の人に笑われて しまったみたいで 心の底から ごめんなさい。>(第17回海洋堂高知賞)〉 地元の南国市内にある高校の生徒からのハガキだ。口ヒゲを生やしたおじいちゃんが、ツルツル頭のてっぺんに細長い白い紙をアンテナのようにはりつけられている。そばには孫娘が描かれていた。 「頭髪」に関するイタズラは、一定の応募があるようだ。 〈<おじいちゃんへ 小さい頃、たくさん 頭にシール貼って ごめんなさい。 (だめだけど、おハゲだったから・・)>(第19回ゴメンジャー賞)〉 頭髪のないおじいちゃんが「余計にハゲるわ・・まっこと困った笑」と少し怒った顔で描かれていた。 「おじいちゃんは、孫に弱いですからね。孫娘には特に甘い」と徳久さんは話す。
お弁当やイタズラの「ごめんなさい」
弁当の話もかなりある。 南国市観光協会でコンクールを担当する竹中さんは「弁当はお母さんが朝早く起きて作ってくれるという認識があるので、残したりすると罪悪感が出るのかもしれません」と感じている。働くお母さんなら、なおさらだろう。お母さんの不在時、慣れないお父さんが作った弁当を、わざと忘れていったというようなものもあった。 驚くようなハガキもあった。 〈<お父さんへ 私が4才の時「ばれるよね」と思い。父の弁当のたまご焼きに黄色いねんどをいれました。 父が帰ってから弁当の中を見ると ごはん1つぶも残っていませんでした!! おちつかないまま、次の日、父は、高熱をだしました。 ごめんなさい!!>(第16回JRごめん駅長賞)〉 油粘土を食べたせいだろうか。それとも別の理由で高熱が出たのか。大人なら玉子焼きとの区別ぐらいつくだろうに、新作料理と思ってありがたく食べたのかもしれない。おそらく妻が作ってくれた弁当だろう。食感と味に違和感はあっても、きれいに食べた。 徳久さんは「子供の時にイタズラで、『あれをやったのは、私です』とか、『弟に罪をなすりつけていました』とか、『何かを壊して猫のせいにしました』というハガキも多く寄せられます」と話す。 〈<買ったばかりの車に、石で落書きをした、幼い私。 せっかくの車が、芸術作品になってしまいました。 本当に、本当に ごめんなさい。>(第11回JRごめん駅長賞)〉 ギョッとするようなイタズラもあるものだ。 こうして毎年大量のハガキが届き、「後免町」は「ごめんの町」として知られていった。
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