『ぷよぷよ』から『はぁって言うゲーム』まで。名作を生むゲーム作家、米光一成の仕事術【HOW I WORK】
情報収集はリアル書店で行なう
──アイデアを生み出す前には、何かしら情報を集める段階があると思います。日ごろの情報収集やインプットは、どのようにしていますか? 書籍から情報を得ることが多いです。書店に出かけて本をチェックするのが好きで、いま住んでいる場所を決めたのも、ジュンク堂に歩いて行けるからというのが理由です。閉店時間までの間、ほぼ全フロアを見て回わるのが楽しい。 あまり早い時間に行くと、1日がそれで潰れてしまうから、「早い時間には行かない」と思っているぐらいです。 ──そんなに好なんですね!たとえば、どんな発見がありますか? 新刊を置く書店は、ビビッドな情報がどんどん入れ替わってるのがいいんですよね。 たとえば、心理学のコーナーに行くと、急に『夢判断』とかフロイトの本が前面に置かれていると思ったら、NHKの番組で取り上げられていたとか。棚の生きてる感じが好きです。 SNSから情報を得ることもありますが、ノイズが多すぎるうえに、すぐ狭くなっちゃう仕組みになってるので、困る。もう少し俯瞰ぎみに、精錬された情報を得るために、書店の棚を見るようにしています。
ゲーム制作に役立つという視点はない。乱読がモットー
──書店をくまなく見て回って、実際に買う書籍は何冊くらいになりますか? また、最近読んだ中で印象的だった1冊を教えてください。 買うのはどれぐらいだろう。 読むのは1年に約200冊ぐらい。斜め読みで済ませたり、積読状態のものもある一方で、繰り返し読む本もあります。 2002年に刊行された『コンピュータ用語の哲学』は再読しました。進歩著しいコンピュータの世界なので、昔の本を読むと、懐かしかったり、今だからわかる発見もあります。そういう再読も含めたら、1日に1冊ぐらい読んでる。 ──1日に1冊ですか! 読むジャンルは本当にさまざまで、ゲームの制作に役立つかの視点では選ばないですね。最近読んで印象的だったのが、今井むつみさんが書いた『学力喪失』。 「今の子どもの学力が落ちている」といった論調の話は好きではないのですが、本書は説得力があって興味深い。 認知科学の知見から、知識を探求する方法の重要性を説いていて、後半にカードゲームが探求学習に有効であるって出てきて興奮しました。 もう1冊挙げると、レトロゲームのお店のBEEP秋葉原で買った『ARGガイド2024』。ARGとは代替現実ゲームのことで、現実と仮想をミックスしたようなゲームのジャンルです。 ビビットなARGのガイドブックはほかにないので、興味のある方にすごくおすすめです。