「子どもが髪を染めてきたらどうする?」小学校教師が考えたこと
「他人とは違う自分」を手に入れるということ
染髪への賛否を超えて、たっくんさんは別の観点からも、子どもの成長についての考えを深めていきます。 「髪を染めると、さらに別な何かで自分を飾ることに意識が向くのはごく自然なことだと思います。そのことが承認欲求を肥大化させ、自分軸ではなく他人軸で生きることを助長させてしまわないか。この問題は結構大きな問題だと考えます」 (たっくんさんの投稿より *一部編集) 大人でも、子どもでも、自分を飾りたくなるのは自然な感情です。 ただ、小学生は、「自分がどんな人間か」のアイデンティティを築き始めていく時期。 「『外見に無頓着になれ』『外見なんて気にするな』と言いたいのではなく、今向き合うべき本質的な問題に目を向けたほうがよいと思うのです」 (たっくんさんの投稿より *一部編集)
突き放すだけでは伝わらない
自分は何が好きで何が得意か。他人とどんなところが違って、どんな人なのか。子どもが自分に向き合い、葛藤(かっとう)し、試行錯誤する時間はアイデンティティの確立に欠かせません。 「問題は、どうやってクラスの子どもと保護者に伝えるか(特に保護者)。うーん、やっぱり難しい」と頭を悩ませるたっくんさんですが、自分の子どもが「髪を染めたい」と言ってきたら、こんなふうに声をかけようと考えます。 「そっか、そういうことに興味が出てくる年頃になったんだね。気持ちはわからないでもない。 でも、今君が髪を染めることで、周りの友達や先生からの見られ方が変わるかもしれない。そのことを考えたら、自分の見た目や能力、行動に責任をもてるようになってからでも遅くはないんじゃないかな? 」 (たっくんさんの投稿より *一部編集) 自分を飾りたい。周囲とは違う特別な自分でいたい──。その思いを否定することは、誰にもできません。 たっくんさんにも、自身が今では考えられない《トンデモファッション》に身を包んでは、特別な存在になったような気がしていた思春期の黒歴史があり、だからこそ子どもの気持ちに寄り添います。どんな結論になったとしても、「周りに変な目で見られるでしょ」「髪を染めるより前にやることがあるでしょ」と有無を言わさず突き放すだけでは、大事なことは伝わらないと考えるからです。 子育て中は、賛否をつけられない問題、一つの答えを出しきれない問題にたくさん直面します。そんな時にこそ、お子さまといっしょにさまざまな視点から向き合い、考え、悩み、話し合いを積み重ねていくことが、お子さまのアイデンティティをつくる一助になるのかもしれません。 ●ご紹介した記事 「子どもが髪を染めてきたらどうする?妻の回答に考えさせられた話」(noteの投稿より)