M-1エントリー開始! 元売れっ子芸人の養成所講師が語る「芸人がネタ選びを失敗してしまう理由」
前田政二さんが、’23年のM-1グランプリを振り返る
6月26日、ついに20回目となる「M-1グランプリ2024」のエントリーがはじまった。大きなルール変更はないものの、今年は選考エリアに新潟が加わることとなったため、さらなる激戦が予想される。 “制御不能”状態の『霜降り明星』粗品 宮迫&キムタクに“言いたい放題”も「吉本が手放さないワケ」 毎年、さまざまなドラマを生む本大会への期待が高まるが、昨年度を振り返ってみると、’01年の第1回大会ぶりに出順1組目の令和ロマンが優勝するなどの明るい話題がある一方で、ネタ選びに翻弄されたコンビが多かった印象も強く、昔からささやかれている「ネタ選びの重要さ」を痛感した年でもあった。 M-1の第1回目から制作スタッフ・予選審査員として関わる一方で、放送作家で養成所講師を25年以上勤めてきた前田政二さんも、X(旧Twitter)で同様のつぶやきをしていた。 ◆盛り上がったのはいいけれど…… 「あくまでも僕個人の感想ですが、昨年のM-1は、最終決勝に残った3組だけが勝ち残れるネタをしていて、それ以外はネタ選びに失敗してましたね」 そう話すのは、M-1グランプリの第1回から第18回大会まで、制作スタッフと準決勝までの審査員を務めた前田政二さん。「スタッフの若返りを図りたい」というテレビ局の意向から、’23年度の大会から離れた古株スタッフの一人だ。 「敗者復活戦は3つのブロックに分けたトーナメント方式で、各ブロックから1組が勝ち上がり、その中からプロの芸人が1組を選ぶスタイルでした。 実はこれ、昔からM-1の制作に関わっている数人の作家と『絶対にやらない』と決めていたスタイルなんです(苦笑)。理由は、最終に残るべき複数のコンビが、1つのブロックに集まる可能性があるからです」 NSC吉本総合芸能学院の1期生として入学し、「銀次・政二」というコンビで活動していた前田さん。同期のダウンタウンらと共に在阪の賞レースで競い合い、『笑っていいとも!』の前身番組にあたる『笑ってる場合ですよ!』や「今宮こどもえびすマンザイ新人コンクール」ほかでも優勝した経験も持っている。自然と、発する言葉には重みを感じる。 「あと、敗者復活会場は大きすぎましたね。確かに、たくさんのお客さんに来ていただいて盛り上がったのはいいんですが、お笑いは会場が大きすぎると、後ろのお客さんから芸人の表情が見えません。 そのため、昔からお笑いの会場は小さすぎず大きすぎず、全身が見えて、なおかつ表情もわかるのが理想とされています。身振り手振りや表情も、笑いの大事な要素なんです。大きなスクリーンに上半身のアップを映しても、マイクで拾った音声が会場の後ろに伝わるには微妙に時間がかかるから、漫才を楽しむ妨げになる可能性があります」 厳しい指摘を入れるのは、意図せずM-1の制作スタッフを離れたからではない。第1回大会から参加し、芸人ファーストな大会となるように真剣にM-1と向き合い、M-1を育ててきたからだ。 「’01年にM-1をやると決まった時に、発起人でプロデューサーの谷(良一)さんがすぐに声をかけてくださいました。『元漫才師やし、NSCで講師も務める構成作家やから、参加する芸人の気持ちがわかるやろう』という理由だったので、生意気にいろんな意見を出させてもらいました。 『1回戦はアマチュア参加者のためにもネタ時間は2分がいい』、『予選の審査員席は芸人の目に入らない客席の後ろ側に、決勝戦ではステージの右横がいい』とか、実はいろんな所で僕の意見が採用されてるんですよ」