「ネコの宇宙葬」に「ペット用の遺体安置冷蔵庫」まで 今どき“葬祭ビジネス”の気になる中身
秋のお彼岸の時期。葬儀にふと関心を持つ人もいるのではないか。8月下旬に開かれた、葬儀などに関連する国内最大級の展示会「エンディング産業展」。会場に出展した企業の製品・サービスからは、今どきの葬儀やお寺の事情が見えた。 【写真で見る】宇宙散骨する遺骨を入れるボックス。ボックスは地球の軌道を数年周回した後、大気圏に突入し、流れ星となる ある企業の出展ブースに飾られていたのは、打ち上げられたロケットの写真パネル。説明に立つ男性が着用しているのは、宇宙飛行士が着る「オレンジスーツ」のレプリカだ。 ブースを構えていたSPACE NTK(茨城県つくば市)は、「宇宙散骨」を手がけるベンチャー企業。粉末状の遺骨を納めたボックスをロケットで打ち上げる。ボックスは地球の軌道を数年周回した後、大気圏に突入し、流れ星となる。
■散骨はスペースXのロケットで 打ち上げにはイーロン・マスク氏が率いるアメリカの宇宙開発会社、スペースXのロケットを使う。利用者が払う宇宙散骨の料金は110万円からとなる。 SPACE NTKにとって2年ぶり2回目となる打ち上げは、10月に行われる予定だ。説明員の男性によると、ボックスに納められるのは16人とネコ1匹の遺骨。ネコの遺骨は一部ではなく、一体分となる。宇宙で一体分散骨するのは世界初になるそうだ。
ペットも家族との意識が一般的になる中、葬儀をしてきちんと見送りたいという人も増えているだろう。「虹の橋を渡る」。愛するペットの死を意味するこの表現が将来、「虹の橋を渡って星になった」に進化するかもしれない。 ペット用の遺体安置冷蔵庫をブースで披露していたのは、たつみ工業(神奈川県川崎市)だ。2021年から人用の遺体安置冷蔵庫の製造販売を本格化。その流れでペット用にも乗り出した。 「人の場合は火葬の前にお葬式があるなどお別れするまでに段階を踏めるが、ペットの場合は違う。ペットでも、冷蔵庫で安置して最適な環境にしてお別れするニーズがあるのではないかと思った」
たつみ工業の岩根弘幸社長は開発の動機をそう話す。ブースを訪れた中国からの来場者とは商談に発展するかもしれないと期待を寄せる。かつての一人っ子政策の影響により、ペットを子どものように可愛がっている家庭が多いとのことで、ペット用遺体安置冷蔵庫に関心を示しているそうだ。 ■ニーズの背景に「火葬待ち」 1962年創業のたつみ工業は、コンビニ内に設置される飲料用などの冷蔵庫を得意とする。首都圏では「セブン‐イレブン」を中心に約8割のシェアを握り、売上高のほとんどをコンビニ向けが占めていた。それがペット用の遺体安置冷蔵庫まで発売するに至ったのは、大きく2つの環境変化があった。