子ども2人を私立小に通わせ、家計が破綻…専業主婦の妻と離婚を決意した大手商社勤め夫の末路
言い争いは平行線に
ここから、太一とマミの普段の言い争いが垣間見えるようなやり取りが続いた。 「妻の頑張りを否定する気持ちはありません。ただ、お金は湧いて出てくるものではないので、限りある給料をどう分配して将来につなげていくか、そういう理性的な話がしたかっただけです」 「夫は、こうしていつもお金のことばかりです。ややこしい家計管理アプリのようなものを『1か月使って結果報告して』と一方的にLINEで送ってきたりします。家事育児で忙しいのに、そんなアプリ見る気にすらなりません。そもそも夫は、私を馬鹿にしているんです」 「妻はいつもこんな感じで、家計の収支がどんなに危ないか説明しようと資料を作っても、『分からない』の一点張りで話になりません。お金のことばかりと言いますが、大切なことでしょう」 次はマミが言い返す番かと思われたが、マミは黙り込んだ。そして、「いつもこれ。お金のことは大事なことで、それを分かっていない私が悪いのよね」と声のトーンを落として話した。
妻が離婚したくない理由
調停人は、同じ分量だけ話しているように見えても、「家計管理」という太一の興味関心に沿った流れになっており、「なぜ離婚したくないのか」というマミの気持ちが話されていないことに気付いていた。また、マミが発した「夫は私を馬鹿にしているんです」の一言も気になっていたため、その言葉をとっかかりにマミに尋ねた。 「先ほど、太一さんに馬鹿にされているというお話が出てきました。現在、金銭管理の方針の違いが問題になっていますが、マミさんとしては、そのほかにも何かご不満や納得がいかないことがあったのですか」 そう問われたマミは、視線を太一から外し、調停人に向かって以下の内容を話した。 「夫は仕事をしていない私を見下し、馬鹿にしていました。でも、私は夫より頭も悪いし稼ぐこともできません。反論できないんです。夫は、かつて私にこう言いました。『君は子どもを産んでいればそれでいい』って。私は凍りつきました。経済的なモラハラもひどかったと思います。どんなに暑くても寒くても、エアコンは夫が決めた設定温度で使わなければいけませんでした。スーパーに買い物に行った際、夫は自分の好きなビールを買いますが、私が買い物かごに入れた飲み物やお菓子は『戻せ』と言われました」