タイに渡って大麻農家になった男の挑戦。「堂々と大麻を栽培して吸うのが夢だった」
米農家から一転、大麻を育てる決意を胸に秘め、海を渡った男がいる。アジアで初めて大麻を合法化した国、タイの首都・バンコク。4階建てのビルが男の農場だ。その数奇な人生に迫った。 ⇒【写真】大麻の手入れをするdoscoiさん
「大麻もお米も要領は同じ」和風農法で大麻市場に参戦
大麻取締法改正で12月からCBD規制が厳格化する日本と真逆の歩みを進めるのが、微笑みの国・タイ。 街角ではジョイントを公然とふかし、恍惚の笑みをたたえる人々の姿が目につく。日本ではありえない光景だ。 ’22年6月、アジア初の大麻解禁へと舵を切ったタイでは、娯楽目的の使用が認められている。首都バンコクなどの市街地には合法的に大麻を販売するディスペンサリーが、コンビニ店に匹敵する勢いで軒を構えている。 そして、この“グリーンラッシュ”と呼ばれる大きな波に乗るべく、日本で培った農業技術を生かし、現地で大麻栽培に励む日本人がいる。 バンコク中心部から東へ約20㎞ほど離れた、ラートクラバン区。4階建ての小さなビルで大麻農家を営むのが、doscoiさん(37歳)だ。 自ら育てた大麻を日々吸い、食欲増進効果の“マンチ”でつくり上げられた巨体と、胸まで伸びたあごひげで、外見のインパクトは強い。だが、その目元はどこまでも優しい。 「ここは居住を兼ねたファーム(農場)で、ビルの2、3、4階を使って土壌栽培で大麻を育てています。成長具合に合わせて、照明は自動管理で12~18時間点灯。品種はアッパーな効きが特徴的なサティバとまったりリラックス系のインディカ、その両方を掛け合わせたハイブリッドの3種計150株を育てています」
水も肥料もこだわったオーガニック栽培を導入
現状の研究では、大麻には薬効成分であるカンナビノイドが100種類以上も含まれていると確認されている。中でも、精神作用に大きく働くのがTHC(テトラヒドロカンナビノール)と、CBD(カンナビジオール)だ。 「品種によってTHCとCBDの含有量は異なりますが、一般的にサティバは、高揚感といった精神活性作用や集中力を高める効果があります。インディカは身体的な鎮静作用であったり、マンチで食欲を増進させてご飯をおいしく食べたいとき、あとは睡眠障害の方が熟睡したいといったケースで使われますね。 一応、タイ当局は『THCは1%まで』という基準を設けているんですけど、厳格に規制しているわけではない。濃いものだと26%ぐらいになります」 doscoiさんのこだわりは、オーガニック栽培。肥料の原料はトウモロコシや海藻類で、水も浄水器を使っている。 「口に入れるものなので安全なほうがいいですし、オーガニックだと喉に引っかかりにくくて、後味がいい。化学肥料を使うとカルシウムなどの成分が抜けきれない可能性があって、吸ったときに肺に引っかかってむせるんです」