子ども2人を私立小に通わせ、家計が破綻…専業主婦の妻と離婚を決意した大手商社勤め夫の末路
専業主婦家庭の離婚
筆者は「家族のためのADRセンター」という民間の調停センターを運営している。取り扱う分野は親族間のトラブル全般であるが、圧倒的に多いのが夫婦の離婚問題である。ADRは、「夫婦だけでは話し合いができない。でも、弁護士に依頼して裁判所で争いたいわけではない」いう夫婦の利用が多いため、裁判所を利用する夫婦に比べると紛争性が低い。また、同席で話し合うことも多く、その夫婦の「らしさ」というか、人間味のあるやり取りになることも多い。そこで「ADR離婚の現場から」シリーズと名付け、離婚協議のリアルをお伝えする。 【写真】子どもを私立小に通わせ、家計が破綻…専業主婦と離婚した商社マンの「末路」 今回のコラムでは、「妻が専業主婦の夫婦の離婚」をテーマとする。共働き夫婦が増えたとはいえ、総務省の「労働力調査」(2023年)によると、専業主婦世帯の割合は3割弱であり、まだまだ専業主婦の妻も数多くいる。妻が専業主婦の夫婦の離婚は、ときに困難な場合がある。以下では、その困難さを体現した事例(「あるある」を詰め込んだ架空の事例)を紹介する。 監修:九州大学法科大学院教授・入江秀晃 <夫婦の経過>
職場結婚から専業主婦に
マミは、短大卒業後、商社に一般職として就職した。そして、働き始めて3年が経ったころ、マミの部署に異動してきた太一と出会った。最初は職場の同僚という関係であったが、同じプロジェクトにかかわる中で意気投合し、交際、そして結婚と、とんとん拍子に進んでいった。子宝にも恵まれ、長女・長男が生まれた。 どこから見ても「幸せ家族」のはずであったが、長女の小学校受験をきっかけに、夫婦関係が悪化し始めた。妻から長女にお受験をさせたいと相談されたとき、夫は渋々ながらも同意した。もっとのびのび育てたいという思いや家計の心配もあったが、子育ては妻に任せきりで、反論するのも億劫だった。長男も私立小学校に通うことになったが、学校以外にも妻は何かと子どもたちにお金をかける提案ばかりで、夫と口論になった。加えて、妻の関心は子どもたちに集中し、夫はそれも不満だった。