これが"本家"WR-Vだ!では日本のWR-Vは何者なのか? フィットクラスのコンパクトSUVはロッキー/ライズやフロンクスのライバルになる!?
日本車が大きなシェアを持つことで知られるインドネシアで、2024年7月18日~28日の期間、国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024(GIIAS2024)」が開催された。筆者が会場を巡り出会った、日本には無い"日本車"たちを紹介したい。 REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)インドネシアで人気の本家WR-VはフィットクラスのコンパクトSUV 【画像】実はこれが"本家"WR-V。。 ホンダはインドネシアの2023年新車販売台数でトヨタ、ダイハツに次ぐ3番目のシェアを持つ。このため、小型車から上級車まで幅広いラインアップを揃えている。その中には、日本でも今春より導入が開始されたコンパクトSUV「WR-V」の名も……。しかし、日本のWR-Vとは少しデザインが異なる。実は、これこそが"本家"WR-Vなのだ。 現行型WR-Vは、グローバルでは2世代目となるが、2022年11月23日に、インドネシアのモーターショーにて世界初公開された。しかも製造もインドネシアで行われるご当地ホンダでもある。 グレード構成はとてもシンプルで、エントリーの「E」とスポーティさと装備を強化した「RS」の2種類。「RS」にのみ、先進安全運転支援パッケージ「ホンダセンシング」装着車が用意される。 そのスタイリングは、若い世代をターゲットにしたエネルギッシュかつスポーティなもの。フロントマスクは、現行型シビック系と似た雰囲気で、全面に押し出されたフロントグリルとシャープなヘッドライトが力強さを感じさせる。逆にリヤスタイルはすっきりと纏められて、爽やかさがある。前後にはアンダーガード風のプロテクションやボディ下部には、ブラックモールが装備され、ルーフレールも備わるなどSUVらしさも演出されている。 ボディサイズは、全長4060mm×全幅1780mm×全高1608mmとコンパクト。ホイールべースは、2485mmと、フィットクラスのSUVに仕上げられている。ただスタイリングの纏まりが良いので、チープさは感じさせない。 パワートレインは全車自然吸気仕様の1.5L直列4気筒DOHCとなり、最高出力121ps/6600rpm、最大トルク145Nm/4300rpmと実用的なもの。トランスミッションはCVTに加え、「E」のみに6速MTも設定されている。駆動方式はFFのみだ。 インテリアはフィット3を彷彿させるデザインだが、よりシンプルだ。メーターパネルはオーソドックな形状のアナログ2眼式となり、サイドブレーキもハンドタイプとなる。フロントシートはサイドサポートが高めでホールド性も良さそう。後席もタイトさはなく、必要十分な広さは確保できている印象だ。 グレードの装備差だが、「RS」が17インチアルミホイール、LEDヘッドライト、6スピーカーシステム、オートエアコン、レザーとファブリックのコンビシート、サイドカーテンエアバックなどが標準化されるのに対して、「E」は16インチアルミホイール、ハロゲンヘッドライト、4スピーカーシステム、ファブリックシートとなる。ただ装備差よりも、デザインアクセントの差の方が大きく感じた。 インドネシアでの価格だが、「E(MT)」が274,900,000ルピア(約251.1万円)。「E(CVT)」が28,490,000ルピア(約260.3万円)。「RS」が304,100,000ルピア(約277.8万円)。「RS with Honda Sensing」が、324,100,000ルピア(約296.1万円)となる。なんと日本のWR-Vよりも高価なのだ。意外と見た目がしっかりしていることにも納得してしまった。 日本版の「WR-V」はインドの「エレベイト」……さらに「BR-V」の存在も? さて日本仕様のWR-Vだが、こちらはインドで「エレベイト」と呼ばれる別車種だ。ボディサイズは、全長4325mm×全幅1790mm×全高1650mm。ホイールベースは2650mmとなり、ひと回り大きなボディとなる。そのロングボディとロングホイールベースの秘密も、インドネシアで確認することができた。 エレベイトのプラットフォームには海外向けの小型SUV「BR-V」のリヤセクションが流用されているのだ。BR-Vは小型車でも3列7人乗り仕様となっているため、その分、ボディを長くすることができ、それが室内にゆとりに繋がっている。 日本のミニマムSUVはトヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー兄弟に加え、トヨタ・ヤリスクロス、さらにスズキがフロンクスを投入してきており、いずれも強敵揃い。特にヤリスクロスと本家WR-Vはガチンコとなるサイズ感だ。その激戦区に本家WR-Vをぶつけても、なかなか厳しい戦いとなるだろう。そこで大きなボディサイズが生むゆとりのある室内空間を武器とした「エレベイト」を日本のエントリーSUV「WR-V」として持ち込んだのは、正しい判断といえよう。 ただWR-V「RS」のスタイリングは素直にカッコ良く、扱い易そうなサイズ感にも好感が持てる。これに専用のスポーティな足回りを与え、少々パワーアップを図れば、面白いミニマムSUVとなりそうと妄想してしまった。それは若者や若いファミリーを狙った分かりやすい商品コンセプトにあるのだろう。 インドネシアのホンダでは2024年上半期にWR-Vを7088台販売し、全メーカーのコンパクトSUVクラスの中で42%を占めたということからも、インドネシアの人気車のひとつであることには間違いなさそうだ。
大音安弘