決して博打ではなかった……賛否集まるポーランド戦西野采配の真相に迫る
ヨハン・クライフを愛し、攻撃的なサッカーを好むロマンチストでありながら、その実、相手に合わせて戦略を練り、手元にいる選手に合ったスタイルで戦うリアリストなのだ。 ここで議論すべきは、他力に委ねた時間稼ぎの是非ではなく、なぜ、このような状況を招いたか、だろう。 先発メンバーを6人入れ替えたことに問題はなかったのか。例えば、サイドバックが本職の酒井高徳を右サイドハーフに入れたのは、おそらくポーランドの攻撃的な左サイドバック、マチェイ・リブスを封じたかったからだろう。相手のサイドバック対策として、守備力のある選手をサイドハーフに起用するのは、あり得ない采配ではない。 しかし、リブスはこの日、ベンチスタートだった。そして、攻撃を組み立てるうえで日本の右サイドが機能していなかったのも明らかだった。指揮官はハーフタイムに引き分け狙いではなく、あくまでも勝利を目指すと強調していたはずだ。 だとすれば、ハーフタイムに酒井高に代えて本田圭佑や香川真司を投入し、先制点を掴み取りに行くべきではなかったか……。 また、指揮官が言うように、日本は1、2戦を通じ、アグレッシブに、攻撃的に、闘志を剥き出しにして戦ってきたのは間違いない。その姿勢に、地元ロシアをはじめとする他国のサッカーファンも日本に好感を抱いてくれていたはずだ。 だが、今回のゲーム運びによって、潮目が変わってしまったのではないか。 ロシアの国営テレビの番組で司会者が「もう日本を応援するのをやめる」と宣言するなど、これまで「日本贔屓」だったサッカーファンが「アンチ日本」に変わった可能性がある。ベルギーと戦うラウンド16のスタジアムは、これまでとは違う雰囲気に包まれるかもしれない。 振り返れば、02年日韓ワールドカップで日本はラウンド16に進出したが、スタメンとシステム変更が災いして、それまでの好ムードが途絶えてしまった。それは結果論かもしれないが、チームを取り巻く運気とはかくも簡単に消えてしまうものだ。 だからこそ、ベルギー戦では自ら手放してしまった良い流れを再び引き寄せるために、これまで以上にアグレッシブで、攻撃的で、見るものを魅了するような熱い戦いを見せなければならない。さもなければ、あの雨の宮城でのトルコ戦のように、これまでの戦いがウソのように、あっけなく冒険を終わらせることになりかねない。 いずれにしても、結果的にグループステージ突破というミッションを達成したうえで、選手6人を入れ替えたことで主力を休ませられたのは間違いない。香川が語る。 「良い休養になったと捉えています。次(ベルギー戦)が中3日でまたあるので、そこに全力を尽くして、良い準備をしたいと思います」 もう一度、言う。ベルギー戦ではこれまで以上にアグレッシブで、攻撃的で、見るものを魅了するような熱い戦いを見せなければならない。世界のサッカーファンを再び日本の味方に付けるような、勝利の女神に再び微笑んでもらえるような――。 失望したサッカーファンに手のひらを返させる――それは、このチームが何より得意としていることのはずだ。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)