ダイドー、セブン、すき家、スシロー…物価急上昇の中、商品値下げ作戦の期待とジレンマ
物価上昇が止まらない経済情勢の中、あえて逆行する形で値下げや低価格商品の販売に踏み切る企業が相次いでいる。消費者が度重なる値上げに疲れ、買い控えやより安価なものを選ぶ節約志向が強まっているためで、小売りや飲料メーカー、外食など業種の垣根を越えた顧客争奪戦の様相を帯び始めている。ただ、値下げは企業利益を圧迫するリスクをはらみ、消費を盛り上げる「賃金と物価の好循環」が遠のく懸念もある。 【表でみる】飲食料品や小売り、外食中心に広がる値下げや低価格商品の販売 「商品の価値という視点では、おいしさだけでなく価格面での価値提供も重要だ」 飲料大手、ダイドーグループホールディングス(GHD)の高松富也社長は、主力缶コーヒー2品の自販機推奨価格を8月下旬、140円から20円引き下げた理由をこう説明した。同月に公表した同社の中間連結決算は、自販機販売で売上高の約9割を占める国内飲料事業が減収。昨年11月に実施した値上げで販売減が如実に出たためだ。 広報担当者は「自主企画(PB)商品をそろえるスーパーやコンビニなどと比べると(自販機は)割高に映る」と、価格競争が進んでいると指摘する。飲料総研(東京)の調査によると、今年1~8月の清涼飲料の出荷数量は業態別で唯一、自販機が前年同期から2%減った。一方でスーパーは2%、コンビニは3%といずれも上回った。こうした中、ダイドーはさらに9月には容器代を抑えられるペットボトル入りで割安なコーヒー飲料も投入した。 ■コカ・コーラは変動価格制試験導入 他社も価格対策に乗り出す。コカ・コーラボトラーズジャパンは、自販機で需要に応じて価格を調整する「ダイナミックプライシング」(変動価格制)を試験導入。遠隔操作で価格を変えるシステムを採用し、「プライスダウン」と表示して値下げに気付きやすいようにしている。サントリーも同様に「ダイナミックプライシングの導入を検討中」とする。 「少しでも安く買いたい」と生活防衛に走る消費者の動向に、飲料業界だけでなく小売業界も対応を迫られている。 スーパー大手のイオンの令和6年8月中間連結決算は、総合スーパー事業の営業損益が82億円の赤字(前年同期は35億円の黒字)に転落した。