【検証】大谷翔平はなぜ「二塁ランナー」がいると打てなくなるのか? 最強バッターの"癖"を解明!
実は、半速球に強くなったことが得点圏打率低下の遠因となっているかもしれない、とお股ニキ氏は続ける。 「勝負どころでは、カウント球のスライダーや外角の速球は省かれ、その対極の内角いっぱいに浮き上がりながら食い込むフォーシーム、ツーシーム、カッターか、フォーク、スプリットなどの落ちる球のどちらかに行き着くもの。中途半端な球を挟まず、初球から勝負球を投げ込む傾向も最近では高まっています。金本知憲さんはこれを『究極の配球』と語っていましたが、対極を駆使する配球は好打者であっても打ちにくいものです」 さらに、今季の得点圏打率低迷には、メンタル面の影響も考えられるという。 「今季の大谷は、超高額契約のプレッシャーからか、打者専念への責任感か、例年以上に『自分が決めてやる』という絶対に打ちたい意識が強く出てしまっています。 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督も『(得点機に)スイングが大きいように見える』と危惧していましたが、引っ張って一発大きいのを狙いすぎているのは明らか。気負いすぎている打者にこそ、『究極の配球』は効果的です」 ■「走者三塁」ではむしろ高打率 今季の得点圏打率をさらに深掘りすると、特殊な傾向が見えてくる。 大谷は「走者一、三塁」では5割、「走者三塁」では.364を記録しており、むしろ高打率といえる。ところが、「走者一、二塁」では.242、「走者二塁」では.091、「走者二、三塁」に至ってはなんと0割。二塁にランナーがいると途端に打てなくなるのだ。 「大谷は左打ちながら、センターやや左や左中間方向への本塁打が多い稀有な打者であり、打ち返そうと目付けする視線の先にリードを取る二塁走者がいると集中しきれない、という仮説は確かに考えられます。 また、昨季までの本拠地だったエンゼルスタジアムは、左中間スタンドに噴水も噴き上がる巨大な岩のオブジェがある特殊なつくりでしたが、今季からの本拠地であるドジャースタジアムの外野スタンドは一般的なつくりです。センター方向の視界がこれまでとは大きく変わり、なかなか目が慣れない、という可能性も考えられます」 そして、打席からの見え方以外で考察したいのは、走者二塁時と三塁時での投手の配球の違いだ。 「走者二塁時と比べて、三塁時のほうが投手はワンバウンドでのワイルドピッチを恐れるため、ストライクからボールになる落ち球を投げにくくなります。 一方、二塁時はその制約がないため、配球の幅も大きい。大谷が苦手としているカッターなどの速球と落ち球が組み合わされることで、極端に打てなくなっているのでしょう」 今季、チャンスで打てないと散々言われている大谷だが、そのイメージを払拭するような強烈なシーンもあったことを忘れてはいけない。自身初の満塁サヨナラ弾で「40-40」を達成したあの試合(8月28日レイズ戦)だ。 「投手にとっては同点の9回裏2死満塁という『絶対に逃げられない状況』でしたが、『絶対に打ちたい大谷翔平』の気迫が見事に勝りました。 今季、得点圏では空回り気味だったものの、あの極限状態ではしっかりと結果を残す。やはり、スター性は絶大ですし、大谷がチャンスに弱いというわけではないと思います」