【検証】大谷翔平はなぜ「二塁ランナー」がいると打てなくなるのか? 最強バッターの"癖"を解明!
歴史的シーズンを送る大谷翔平(ドジャース)だが、今季は「得点圏打率」の低さも注目を集めている。大谷はチャンスに弱いのか? 何が原因なのか? 野球評論家のお股ニキ氏がその謎に迫る! 【写真】常勝軍団ドジャースに解け込む大谷翔平ほか ※成績は日本時間9月10日時点。 * * * ■本来、得点圏では打率が上がりやすい 前人未到の大記録、シーズン50本塁打&50盗塁の「50-50」へと突き進む大谷翔平(ドジャース)だが、意外にも数字を伸ばせていないのが「得点圏打率」だ。 開幕当初から「今季は得点圏で打てない」と指摘されてきた大谷だが、夏場以降はその傾向がさらに顕著に。8月の得点圏打率はわずか.093と1割を切り、シーズン通算得点圏打率.217は規定打席到達者でリーグワーストの数字となっている。 得点圏打率の低下と比例するように、8月は月間打率.230と急落し、9月に入っても2割前後を推移。シーズントータルでも2割9分前後にまで下がり、夢の三冠王は少々厳しい目標となってきた。 解せないのは、過去の大谷はむしろチャンスに強い打者だったこと。MLB移籍後、打率よりも得点圏打率が低かったのは、膝の手術明け、かつコロナ禍で60試合制だった2020年シーズンのみ。今季の大谷は明らかに異質なのだ。 『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏は「本来、好打者にとって得点圏では打率が向上しやすい」と解説する。 「日本ほど極端ではないものの、MLBでも得点圏、特に三塁にランナーがいるときは守備位置が浅くなり、打者にとってはバットに当てればなんとかなりやすく、有利です。 また、得点圏に走者がいると極端な守備シフトを敷くことも難しい。よって、大谷のような左打者にとって、本来は得点圏に走者がいるほうが打率は残しやすくなることが多いのです」 では、今季の大谷はなぜ得点圏で結果が出ないのか? 「大谷本人が言及したわけではないので、あくまで仮説ですが......」と前置きしつつ、お股ニキ氏はいくつかの視点から考察をしてくれた。 「大谷のスイングは始動後の動きがやや大きく、『1、2の3』でタイミングを取っているため、右投手の投げる内角高めのフォーシームやカッターなどの速球に差し込まれやすく、最後は落ち球で仕留められがちです。ダルビッシュ有(パドレス)も大谷との対戦では、カッターを効果的に使って三振を奪っていました」 この課題が得点圏ではより顕著になるという。 「得点圏に走者がいる場合、クイックで投手のモーションが速くなるため、速球により差し込まれやすくなります。一方、左投手の場合、外角や低めの変化球に対して打ち損じや見逃しが増えます」 さらに、右肘手術からのリハビリ期間であることも加味する必要がある。 「右肘が伸びないように固定していて、腕の動きに制限があるのかもしれません。実際、昨季まではエース級投手による100マイル(約160キロ)超のボールやインコースへの厳しいボールもしっかりとらえることができていました。 今季は速いボールに苦戦する一方、スライダーやチェンジアップなどの甘い半速球にはめっぽう強い。泳ぎながらとらえることができ、やや〝半速球専門打者〟のような印象です」