日銀マイナス金利導入決定 黒田総裁が会見(全文1)決定内容について
日銀の黒田総裁は29日会見し、マイナス金利を導入する新たな追加金融緩和を発表した。日銀の当座預金の一部について、金利を現在のプラス0.1%から、マイナス0.1%に下げる政策で、黒田総裁は「量と質に金利面を加えた3つの次元で全体として金融緩和を進める」と強調した。 【中継録画】日銀マイナス金利導入決定 黒田総裁が会見
金融政策決定会合の内容について
幹事社:それでは今回の金融政策決定会合の内容について展望レポートで示された経済・物価見通しも踏まえてご説明お願います。 黒田:本日の決定会合では2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入することを賛成多数で決定いたしました。これまでの量と質にマイナス金利という金利面での緩和オプションを追加し、いわば3つの次元の全てにおいて追加緩和が可能なスキームとなります。具体的にはまず、金利の面では日本銀行当座預金にマイナス0.1%というマイナス金利を適用します。今後必要な場合には、さらに金利を引き下げます。当座預金にマイナス金利を付すことでイールドカーブの起点を引き下げ、金融市場に幅広くマイナス金利が浸透することになると考えられます。量の面では大規模な長期国債の買い入れを継続することと併せて、金利全般により強い下押し圧力を加えていきます。次にマイナス金利のしくみをご説明します。今回のスキームでは金融機関が保有する日本銀行当座預金を3つの段階の階層構造に分割し、基礎残高にプラスの0.1%、マクロ加算残高に0%、そして政策金利残高にマイナス0.1%を適用いたします。金融取引の価格や金利形成は新しい取引を行うことに伴う追加的、あるいは限界的な損益によって決まりますので、政策金利残高に適用されるマイナス0.1%が、イールドカーブの起点として、様々な市場の金利や価格に影響を与えることになります。一方、部分的にゼロあるいはプラス金利を適用することによって金融機関収益を過度に圧迫しかえって金融仲介機能を弱めることを防ぐことができます。このように階層構造は金融仲介機能に配慮しながら、マイナス金利の効果を最大限に発揮することを狙ったものであります。類似の制度はスイスなど大き目のマイナス金利を実施している国で採用されています。日本銀行は2つの物価安定の目標実現をめざし、これを安定的に持続するために必要な時点まで、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を継続いたします。今後とも経済物価のリスク要因を点検し、物価安定の目標の実現の必要な場合には、ちゅうちょなく、量・質・金利の3つの次元で追加的な金融緩和措置を講じます。次に今回の政策決定の背景となった経済物価見通しについて展望レポートに沿って説明いたします。我が国の景気は輸出、生産面に新興国経済に減速の傾向がみられるものの、緩やかな回復を続けております。先行きは家計、企業の両部門において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内事業が増加基調とたどると考えられます。また輸出も新興国経済が減速した状態から脱していくことなどの背景に緩やかに増加するとみられております。このため、我が国経済は基調として緩やかに拡大していくと考えられます。物価の先行きについては、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はエネルギー価格下落の影響から当面、0%程度で推移するとみられますが、物価の基調は着実に高まり2%に向けて上昇率を高めていくとみています。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格の寄与度に現在のマイナス1%強から次第にはく落していきますが、2016年度末まではマイナス寄与は残る試算されます。この前提のもとでは消費者物価の前年比が物価安定の目標である2%程度に達する時期は2017年度前半頃になると予想されます。その後は平均的にみて2%程度で推移するとみられます。今回の見通しを従来の見通しと比べますと、成長率の見通しはおおむね予測どおりです。物価の見通しは、2016年度が下振れています。物価の見通しの下振れおよび2%程度に達する時期のあとずれは原油価格の想定を下振れさせたことによるものであります。なお、展望レポートについては佐藤委員、木内委員から消費者物価が見通し期間中には2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、否決されました。以上、ご説明したようにわが国の景気は緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に高まっています。もっともリスクの面ではこのところ原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから金融市場は世界的に不安定な動きとなっています。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大していると考えられます。日本銀行はこうしたリスクの顕現化を未然に防ぐ、2%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入することといたしました。以上です。 幹事社:もう1問お尋ねします。昨日、日本経済の司令塔でもある甘利経済再生担当相が辞任をされました。今後の日本の経済成長に対する影響を受けて、どのようにお考えでしょうか。 黒田:甘利大臣の辞任については、コメントする立場にありませんので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。甘利大臣には経済財政担当大臣としてさまざまな場面で大変お世話になりました。心から感謝申し上げたいと思います。アベノミクスについては、石原新大臣の下でこれまでどおり、しっかりと遂行されていくものというふうに考えております。