日銀マイナス金利導入決定 黒田総裁が会見(全文1)決定内容について
リスクの顕現化を未然に防ぐため、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入した
幹事社:それでは各社からどうぞ。 朝日新聞:朝日新聞のノジマです。2点お伺いできればと思うんですが、先ほどの今回の政策に至る背景のところで、新興国経済の問題であるとか、原油の話をされてました。ただ、総裁、割と直近までこれらの影響っていうのは、まだそんなに大きくないのではないかというようなご発言もされておりました。もちろん、これ、先々のリスクを未然に防ぐというご説明は分かるんですけれども、ある種、マーケットではECBの追加緩和を示唆したり、マーケットの中でもその追加緩和を織り込むような動きがもうすでに出ておりました。ある種これ、何もしないと、マーケットが一段と崩れてしまうんじゃないかというようなことも配慮の上、行われたのではないかというのを1つ確認させてください。 もう1点は、ちまたでよく限界が、政策にあるんじゃないかと言われておりました。で、総裁に尋ねるとこちらの場でも限界はないんだと、国債だってもっと買えるんだというふうにおっしゃってました。ただ、もし、それが本当なんであれば、量を増やすという判断はあったかと思います。今回、あえて今までの経験や枠組みに加えて、マイナス金利を入れないといけないということは、今までの量を積み上げるだけではむしろ限界があったということを示してるようにも思えるんですが、この点についてご意見お伺いできますでしょうか。 黒田:まず、第1点につきましては、先ほどご説明いたしましたように、年初来の市場のかなり大きな変動、不安定さ、その背景として、中国をはじめとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などがあったというふうに言われておりますけれども、こういったことがわが国の企業のコンフィデンス、あるいは人々のデフレマインドの転換が進もうとしてるわけですけど、そういうものに影響が出てくる、リスクが高まってるというふうに見られましたので、こうしたリスクの顕現化を未然に防ごうということで、今回マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入するということにしたわけでございます。ECBやFRBの、欧州とか米国の金融政策の動向はもちろん注視しておりますけれども、あくまでもわが国の経済、物価動向、そのリスク、そういったものに対処して今回の決定を行ったということでございます。 それから今回導入したことは、マイナス金利を導入して、マイナス金利付き量的・質的金融緩和ということにしたわけですけれども、これが国債買い入れなどの量的拡大が限界に達したということでは全くありません。先ほどご説明したとおり、マイナス金利付き量的・質的金融緩和というものは従来の量的・質的金融緩和に金利面での緩和オプションを追加して、量、質、金利といった3つの次元で緩和手段を駆使することによって、金融緩和を進めるというものでありまして、金利面で先ほど申し上げたように、日銀当座預金の金利をマイナス化することによって、そのイールドカーブの起点を引き下げるわけですし、引き続き量的・質的金融緩和において、大規模な国債買い入れていくわけですので、それによって金利全般を押し下げるという強い圧力が働くということであります。 従いまして、今回のマイナス金利付き量的・質的金融緩和というものは、従来の量的・質的金融緩和の限界を示すものではなくて、むしろそれを含めて全体として3つの次元でさらに金融緩和を進めることができるようにするというふうに思っております。 日本経済新聞:すいません、日経新聞のイシカワといいます。公表文の中にもありますし、今のお話にもありましたけれども、今後のさらなる追加緩和ということもかなり鮮明にされていると思うんですけれども、それぐらい世界経済というのはリスクの大きい状態だと思ってらっしゃるのかということが1点と、あと、これまで戦力の逐次投入はしないとおっしゃって、大胆な政策を進められてきたと思うんですけれども、今後はそういうリスクに合わせて、こまめに金利を下げたりとか、政策の手法といいますか、やり方が変わってくるということなのか、そこら辺についてご説明いただければと思います。 黒田:IMFの最近の世界経済見通し等を見ましても、世界経済全体として緩やかに回復してる、成長してるというシナリオは変わっておりませんけれども、基本的に新興国、資源国の経済見通しを下げることによって、世界経済全体としての見通しも従来の見通しよりも0.2%ぐらいですけども、IMFは引き下げております。で、その際にもいろいろなリスクを指摘しておりますけれども先ほど申し上げたように、中国を含む新興国、さらには最近の石油価格、その他の資源価格の下落に見られるような資源国の状況と、こういったリスクがあることは前から指摘されてるとおりでありまして、また年初来のかなり大きな金融市場の不安定さというのも、そういうものを、まああるんで市場が反映したものもあると思いますけれども、一番重要な点は、そういうことがわが国の、日本の企業マインド、あるいは人々のデフレマインドからの脱却というものに対して、マイナスの影響を及ぼす恐れが高まっているということでありまして、やはり、そういう、それに対しては従来から申し上げておりますように、ちゅうちょなく対応するということでありまして、今回のマイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入したということであります。 2013年の4月に量的・質的金融緩和を導入いたしまして、その際にも戦力の逐次投入というのがあって、状況を踏まえて思い切った対応をするということを申し上げました。その後もいろいろな経済の変動の中で、一昨年、2015年の10月末、量的・質的金融緩和を導入して以降、1年半ぐらいたったころでしょうか。その時点で消費税導入後の消費がやや、天候不順とかいろんなのがあったと思いますが、ややドライということで、特にその年の夏から原油価格が大幅に下落し、それが当分続きそうだという状況の下で、先ほどのようにデフレマインドからの脱却にマイナスの影響を及ぼすというリスクがあるということで、量的・質的金融緩和を拡大したわけです。 で、その後、いろいろな状況を見ておりましたけれども今回、一昨年の10月から比較しますと、1年と3カ月ぐらいですけども比較して、先ほど申し上げたような状況を踏まえてこの際、追加緩和をする必要があるということで、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入したということであります。毎回、金融政策決定会合において、経済、物価動向その他を分析して、金融政策について調整するかどうかを議論するというのは、従来から変わっておりません。今回以降もそういうことであろうというふうに思っております。どうぞ。