日銀マイナス金利導入決定 黒田総裁が会見(全文1)決定内容について
国債買い入れペースを維持しつつ、イールドカーブ全体を引き下げていくことが効果的
テレビ朝日:テレビ朝日のヒイラギと申します。2013年の金融緩和のときに、いろいろ想定されて、量的・質的金融緩和を導入されたと思うんですが、2年程度ということで、やはり量的・質的金融緩和ではデフレが結局、2%の物価上昇にはできなかったということなんでしょうか。それともう1つ、今月の18日に国会で、マイナス金利は検討していないと、ある意味、否定的とも取れる発言をされていましたが、それが今回、こうした形で導入になったということについて、あらためてお伺いします。 黒田:量的・質的金融緩和を2013年の4月に導入した際には、さまざまな経済状況を踏まえて、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の物価安定目標が達成できるような大規模な、大胆な量的・質的金融緩和というのを導入いたしました。その結果、経済の好循環が進み、2014年の4月には物価上昇率も、消費税を除いても1%台半ばまでいってたわけですけども、その後、先ほど申し上げたような状況、そして特に原油価格の大幅な下落と、これはほとんど誰しも予想してなかったわけですけども、そういったことで、物価上昇率が日本のみならず世界的に低下していっておりまして、欧米でもヘッドライン・インフレーション・レートとか、ヘッドラインインフレ率とかがほとんどゼロに近いという状況に今なっています。 ただ、日本も欧米もいわゆる生鮮食品とエネルギーを除いたところで物価の基調を見ますと、1%台前半程度になっておりまして、各国の金融緩和措置、そして特に日本の量的・質的・金融緩和措置というのは、初期の効果は出てるというふうに思っております。ただ、今申し上げたように、原油価格がこれだけ下がると、さらに最近に至ってもさらに下がって、現在は30ドル台の前半ぐらいにきてるわけでありまして、そういった下で、ヘッドラインインフレーション率が下がったということは先ほど申し上げたとおり、わが国の量的・質的金融緩和、あるいは、諸外国の量的な緩和も効果がなかっということであって、まさに物価の基調の改善には効果があったわけですけども、当面、原油、これだけ下がりますと、その影響が出てくるということであると思います。 なお、先ほど申し上げたように、マイナス金利付き量的・質的金融緩和というものを今回導入いたしましたのは、現在の年間約80兆円という国債買い入れペースを維持しつつ、先ほどから申し上げてるように、イールドカーブの起点の金利をマイナスにするということによって、イールドカーブ全体を引き下げていくということが、今の時点で最も効果的なものだというふうに判断したわけであります。 なお、先ほど来、申し上げてますとおり、量、質、金利と3つの次元のオプションがあるわけですので引き続き、必要になればちゅうちょなくそういったものを活用して2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという目標に邁進してまいりたいというふうに思っております。どうぞ。 共同通信社:共同通信のイデです。先ほどの質問から若干逆の観点からになるんですが、このマイナス金利の建て付けなんですけれども、ECBなんかと比べるとずいぶん銀行に優しいんではないかという感想を持ちます。これは日銀が付利を付けて銀行にあげている分というのは、その分、国庫納付が減ってるということで、これは国民負担の一種と理解することも可能だと思うんですけれども、この既存の分の220兆円でしょうか。この分について、今後も好調な収益を上げている金融機関に対して、0.1%ですから2,200億ですかね。あげ続ける必要性があるのでしょうか。 黒田:これは先ほど来申し上げていたとおり、金融機関の収益に過度な影響を与えますと、かえって信用仲介機能、金融仲介機能が損なわれる恐れがありまして、実は欧州の中央銀行もほとんどそういうことで、階層構造でいってるわけです。で、ご指摘のECBは階層構造を取っておりませんが、ECBの量的緩和措置はこれまでのところ、まだ金融機関の準備預金を日本とかECB以外の欧州の国々のように、大きな額になっていませんので、階層構造を取らなくても、金融機関の収益に大きな影響を与えて金融仲介機能を損なう恐れはないというふうに判断されているのではないかと思います。 それに対して、わが国やECB以外の欧州の中央銀行は階層構造を取っておりまして、それは収益に過度の影響を与えて、金融仲介機能を損なうことのないように。しかし、一方で、限界的なところではマイナス金利を付することによって、金利とか相場に十分な影響が与えられるようにということでやってるというふうに理解して、私どももそういった経験、知見を活用しつつ、わが国の実情に合ったシステムを導入したということでございます。どうぞ。 産経新聞:産経新聞のフジワラといいます。よろしくお願いします。2点あります。1点目がマイナス金利は結果的に通貨安に働きやすいという面があると思うんですけども、今回も若干円安の方向に振れてます。年始から円高、株安が続いていた中で、先ほど総裁がおっしゃった企業マインドもだいぶ悪化していたと思うんですけども、決してそれを狙ったものではないとは当然思いますが、結果的に今回のことで企業マインドも若干改善するという効果は見受けられるのかどうかというところが1点です。 2点目は、展望レポートで示されてる2017年の前半ごろにCPI上昇率が2%に達し、そのまま安定していくと。平均的に見て2%で推移するという表現がございますけども、消費税再増税が予定されている中で、消費の下押し圧力というのはどういうふうにみていらっしゃるかというのを教えてください。 黒田:まず第1点ですけども、私どもの金融政策は欧米の中央銀行の金融政策と同様、通貨をターゲットにしたものではありませんので、あくまでも先ほど来、申し上げているような形で、イールドカーブ全体を押し下げて、実質金利を引き下げて消費や投資に好影響を与えると、そういうことを通じて需給ギャップの改善、あるいは物価上昇予想の引き上げということをもたらして、物価が徐々に2%の安定目標に向けて上昇していくということを狙ったものであります。為替相場については、そもそも日本銀行の権限でも義務でもありませんので、従来から申し上げているのは、為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいというのが国際的な合意であると思っていまして、現在の状況がそれに反しているのではないと思っております。 いずれにいたしましても、先ほど申し上げたようなマイナス金利付き量的・質的金融緩和を推進することによって、企業マインド、あるいは人々のデフレマインドからの脱却ということをサポートできればというふうに思っております。 それから、2017年の4月に政府は消費税の税率を2%引き上げる。で、その際には食料品などに対する軽減税率を施行するという考えで進んでおられるように思っております。私どもは、財政政策のほうについては、あくまでも政府で決めてもらうことに沿って、見通しを作っております。そうした下で、今回の展望レポートに添付されております政策委員の見通しの中央値をご覧になっていただきますと、成長率については、確かに2017年度に消費税が、導入したら2%上がるということを踏まえて成長率が2016年度に比べて低下するという動きになっておりますが、プラス、維持するという見通しにもなっております。そうした下で、物価については、2017年度にはプラス1.8%程度に、これは消費税を除いてですけど、上昇するというふうに読んでいるわけです。どうぞ。