日銀マイナス金利導入決定 黒田総裁が会見(全文1)決定内容について
マイナス金利は、実体経済にどういう効果があるのか?
NHK:NHKのヨシノですけれども、このマイナス金利なんですけども、実体経済にどういう効果があるのかと。これは企業の賃上げとか投資の増加とか金融機関の貸し出し増とか、具体的にどういう形でつながるのか。これは今回、反対意見の中でも石田委員が、これ以上の国債イールドカーブの低下が実体経済に効果をもたらすとは判断されないというふうにおっしゃってますけれども、なぜこれが効果があるというふうに言えるんでしょうか。 黒田:これは、2013年の4月に量的・質的金融緩和を導入したときからの金融緩和の効果の説明、金融緩和の効果が経済に影響していくかですね、説明したとおりでありまして、基本的にイールドカーブがこういうふうになってるものを全般にわたって引き下げる、名目金利を全体として引き下げる一方で、物価上昇予想を、予想物価上昇率を引き上げることによって、要は実質金利をイールドカーブ全般にわたって引き下げると。それによって消費や投資を刺激し、経済が拡大し、その中で需給ギャップが縮小し、インフレ期待の上昇と相まって物価上昇率を2%に向けて引き上げていくということであります。 今回のマイナス金利付き量的・質的金融緩和は先ほど今、先ほど申し上げたように、そういうものを同じように、こちらの一番短いところの起点をさらに引き下げて、当然、短期金利は相当下がると思いますけども、一方で長期投資からの大量の借り入れというのは続けるわけですので、さらに全体的にイールドカーブが下がっていくと。そうした中で、実質金利が全般にわたって下がり、これは消費や投資にプラスに動くと。 それからもう1つ、2013年の4月の量的・質的金融緩和の導入時にも申し上げていましたが、そういうことがあって、いわゆるポートフォリオリバランスということも生じると。それがまたさらに経済にプラスに効くと。これは今回の措置でも同じでありまして、イールドカーブ全体がこちらの起点を引き下げること、国債の大量買い入れを続けることによって下がってくるということですので、当然、ほかの資産にポートフォリオリバランスをしていくと。で、それがまた経済の拡大にプラスに影響するということであります。従いまして、金融緩和の効果というものは十分に期待できるというふうに考えております。どうぞ。 ロイター通信:ロイターのイトウです。確かにマイナス金利の導入によってイールドカーブ全体を押し下げるという効果はあると思うんですけれども、実際の貸出金利というのはマイナスに、やはりならないと思われます。そういう意味では、実体経済のところに資金が、画期的という効果はマイナス金利ということについてはないのではないかと思うんですが、その点をどうお考えになるかということが1点と。 あと一方で、先ほど金融仲介機能にも配慮したとおっしゃられたんですけれども、実際、超低金利の長期化で、金融機関の利ざやとかもかなり極限まで縮小してるという認識、国内でもうけがあまり出ないということだと思うんですが、今回のマイナス金利導入で金融機関の経営、ひいては金融システム全体が不安定化するリスクについて、この点をどうお考えか教えてください。 黒田:まず、貸出金利につきましても、当然、下方に影響が出てくるというふうに思っております。いずれにせよ、いかなる金融緩和であれ、伝統的なものであれ、あるいは量的な緩和であれ、今回のようなマイナス金利付き量的・質的金融緩和であれ、いずれにしてもイールドカーブ全体を押し下げる、さらには物価上昇率の予想を押し上げるということを通じて、実質的なイールドカーブを押し下げるということによって、投資や消費を刺激して経済を支え、持続的な成長経路に乗せ、先ほども申し上げたように、需給ギャップを減らす一方で、物価上昇期待を引き上げて、徐々に物価安定目標に近づけていくということには変わりはないわけであります。 金融機関への影響につきましては先ほど申し上げたように、今回のマイナス金利の導入が金融機関の収益に過度な影響を与えて、金融仲介機能にマイナスにならないようにですね。一方で、限界的な金利や相場の決定にはマイナス金利が働く一方で、金融機関の収益に過度な影響が出ないような階層構造にしたということでありまして、これによって、金融機関に大きな影響が出るとは思っておりません。ただ、先ほど申し上げたように、いかなる金融緩和であれ、緩和自体が短期的には金融機関の収益に影響を与えるということは避けられないわけでありまして、問題はそういう金融緩和を通じて、経済をできるだけ早く、ノーマルな物価安定が、目標が達成できるような持続的成長経路に乗せる。そういうことによって、実は金融機関の収益も改善していくわけでありまして、デフレの下で金融機関の収益が良くなるということはないというわけであります。どうぞ。