エネルギー小国日本の選択(14) ── 原発事故の被害と高まる反原発論
「2030年代の原発稼働ゼロ」か「10年以内にベストミックス」か
反原発の動きは日増しに強まっていった。「稼働中の原発は止めろ、止まっているものは動かすな」と訴え、運転差し止め仮処分を求める動きが全国的、時に組織的に広がった。 これまで触れてきたように、原発をめぐっては震災前からも賛否が割れ、推進か撤退かで揺れ動いてきた。不祥事や事故があるたびに反対する動きが強まった。 代表的なものに、東北電力が新潟県巻町(現新潟市西蒲区)に建設予定だった巻原発がある。1970年ごろから計画が始まったが、アメリカ・スリーマイル島と旧ソ連・チェルノブイリの原発事故や、もんじゅのナトリウム漏れ事故などを受けて1996年、建設の是非をめぐる住民投票を実施。反対派が多数となり、東北電は計画を白紙撤回した。 福島第1原発事故後、国内の原発をめぐる訴訟はかつてなく増え、また争いが激しくなっている。今年には、東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判も始まった。別途詳しく触れたい。 しかし、かつてない逆風の中でも、原発を推し進めようとする動きは政府、産業界を中心に根強かった。2012年12月の衆院選では、当時政権政党だった民主党が「2030年代の原発稼働ゼロ」を掲げたのをはじめ、多くの政党が「原発ゼロ」を公約に掲げた。だが結果は「10年以内にベストミックス(最適なエネルギー源の組み合わせ)を確立」とした自民党が圧勝した。そして今に続く安倍政権が、企業業績の好調さも背景に原発を活用する政策を取り続けている。 次回はそうした政権を選択した日本、原発を推進する官民の思惑を考えていきたい。