決勝T進出のなでしこが抱く3つの不安
女子W杯で連覇を狙うなでしこジャパンが、決勝トーナメント進出を決めた。 初戦のスイス戦は1-0、日本時間13日に行われたカメルーン戦も2―1の辛勝である。試合開始早々の前半6分にMF鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)、17分にはFW菅澤優衣香(ジェフユナイテッド千葉レディース)がゴールを奪う最高のスタートを切ったが、その後に放ったシュートは1本だけ。 対照的にカメルーンに20本ものシュートを浴び、後半は防戦一方の展開となった。終了間際に今大会初失点となるゴールを許し、アディショナルタイムにもエース・エンガムナットにあわや同点となるヘディングシュートを見舞われる。スイスとの初戦も後半に波状攻撃を浴びた。2試合を通じて目立ったのが、後半に入るとスタミナと走力が激減することだ。 日本女子代表の初代専任監督で、現在は、解説者を務める鈴木良平氏は、2戦を終えたなでしこジャパンに「3つの不安がある」と指摘する。 「1番目にして最大の不安は、全体的にコンディションがよくない点です。なでしこ本来のワンタッチ、ツータッチでの速いパス回しが、今大会ではあまり見られない。ボールを速く動かすためには、人も動かないといけない。カメルーン戦でいえば、中盤よりも前の選手の大半は体が重そうだった。日本国内で行われたイタリア戦でのプレーと、いま現在を比べればまったく違う。考えられるのは、カナダに入ってからのコンディション作りがそれほど上手くいっていないのでは、ということ。日本でコンディションを一度上げるのは当然の作業で、その後に落としながらキレのある体に戻さなければいけないところで果たしてどうだったのか」 選手全員のコンディションが悪いというわけではない。スイス戦で先発した右サイドバックの有吉佐織(日テレ・ベレーザ)はアグレッシブな攻撃参加を繰り返し、右MFの大野忍(INAC神戸レオネッサ)も持ち前である俊敏性を存分に発揮していた。 スイス戦で男女を通じて世界初となる6大会連続のW杯出場を達成。日本人選手として初めて200個目のキャップを獲得した36歳のMF澤穂希(INAC神戸レオネッサ)に関しても、鈴木氏は「コンディションは決して悪くない」とこう続ける。 「スイス戦では長い距離を走って相手ゴール前に顔を出し、体を張ってピンチを防いでいた。得点王とMVPを獲得した4年前と比較したら可哀そうですけど、休息を与えるために先発から外れたカメルーン戦を見て、澤がいないときに誰が代役を務めるのかがまだ見つからない。4年前の澤ではないにせよ、なでしこにはまだ必要だと感じた」 センターバックは4年前もコンビを組んだ岩清水梓(日テレ・ベレーザ)と熊谷紗希(リヨン)が健在。特に24歳の熊谷はヨーロッパでプレーしたこの4年間の経験を糧に、非常に成長したと鈴木氏は評価している。