画期的ビジネスモデル挑戦も…なぜ元WBO世界王者の伊藤雅雪がノーランカー三代大訓に敗れる”番狂わせ”が起きたのか?
リング上で三代は「ふがいない内容だったが、吉野選手なら、もっと楽に勝てる。春になると思うがぶっ倒したい」と強気発言をした。 控室で、その真意を聞かれ「今後を左右するような経験値、自信がついた。次は1.5倍くらい強くなっていると思う。だから吉野戦は楽になれる」と説明した。 古い話で恐縮だが、元WBC世界スーパーフライ級王者の徳山昌守氏は、元2階級制覇王者の井岡弘樹氏を相手に“番狂わせ“を起こして、自信を深め、その後、世界王者に上り詰めている。この試合で三代が覚醒する可能性はある。 一方、行き場をなくした伊藤は、自らの進退について「今後のことは考えられない」と正直に語った。 「目指しているところは国内ではない。下剋上じゃないが、ランクの下の選手に負けたことは簡単なことじゃない。もう一度、国内で一から簡単に気持ちも作れない」 新型コロナのパンデミックの影響で、世界の市場に打ってでる環境が整わない中で、あえて国内の試合に目を向け、「A-SIGN」と名づけた新しいボクシング興行のビジネススタイルに挑戦した。協賛企業を募り、クラファンも絡めて、3000万円を超える資金を集めた。ライティングやリング設営も豪華にし解説者に元WBC世界バンタム級王者、山中慎介氏、ゲストに初めて生でボクシングを見たという“場違い”なタレントの長嶋一茂氏を迎え通常の地上波なみの中継体制を整えた上で、あえて深夜枠でのテレビ中継ではなくYouTubeで生配信した。これらが実現したのも伊藤の求心力があってのもの。かなりの運営コストをかけたようだが、そこから伊藤の“取り分”が弾き出され1000万円以上のファイトマネーは確保したと言われる。国内のノンタイトルでは破格の夢のある金額である。 だが、その「企画、演出、主演」を務めた伊藤が主演の資格を失った。 「石井会長や周りの方々の協力があって次のストーリーを見据えながらやったイベント、チャレンジだった。周りに申し訳なかった。僕が勝ってこそ成功と思っていた。(この先は)なかなか難しい状況。考えなきゃいけなくなった」 逆境こそ人を強くする。 今こそ伊藤雅雪はボクサーとしての人間力を試される時だろう。「企画、演出、主演」で今度はリベンジ物語の舞台を作ればいい。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)