綾野剛、役者をナメていた自分を本気にさせてくれた
あらゆる役を生き抜き“無限の顔”を見せる綾野剛さん(33)。公開中の映画「新宿スワン」(園子温監督)では、金髪アフロの熱血スカウトマンという主人公に命を吹き込んでいます。今や、オンリーワンの輝きを放つ存在となりましたが、「役者・綾野剛の生みの親」という恩人について、熱を帯びた言葉を連ねました。 僕の恩人は、石田秀範(いしだ・ひでのり)監督です。 僕のデビュー作となった「仮面ライダー555(ファイズ)」(2003年、テレビ朝日系)で監督をされていたのが石田さんでした。 石田監督なくして僕は語れないし、石田監督がいたから今の僕がいる。そう言い切れます。まぎれもなく、役者・綾野剛の生みの親です。 というのも「仮面ライダー」で最初のシーンを撮影するまでは、正直な話、役者の仕事を完全にナメてたんです。「朝っぱらからオモチャ振り回して何やってんの?セリフさえ合ってれば、それでいいんだろ」という感じで。ハッキリ言って、小遣い稼ぎになればいいと思ってやってました。それが、石田さんに会ったことで生業(なりわい)に変わったんです。 そのシーンとは、過去に一緒に孤児院にいた仲間たちが分裂して敵同士になるというもの。その元仲間と対峙(たいじ)して、さあ今から戦うという場面だったんですけど、セリフにして数行。いくら長くても、時間にして30秒もないシーンだったんですけど、結果的に、そのシーンを23テイクまで撮り直したんです。 なぜ何回も撮り直さないといけないのか。なぜここまで恥をかかされなきゃいけないのか。しかも、別に役者をやりたくてやってるわけじゃないのに、なぜ今自分はこんなことをしているのか。だから、こんなことをやるのはイヤだったんだ。こんな思いをするんだったら、全部ぶっこわしてやる。 そういった思いが頭の中で渦巻きながら、1時間20分くらい、延々と撮り直しをしていました。