高輪ゲートウェイ駅周辺の「再開発」 JR東日本のプレスリリースが抽象的でよくわからないので、自分なりに調べてみた件
技術依存のリスクとデータ利用問題
これはどれほど未来的なものだろうか――。 空いている店や時間帯などの情報をユーザーごとにカスタマイズして提供することや、自律走行ロボットの活用は、確かに先進的だ。 しかし、それ以上に画期的なのは、データを用いて繰り返しシミュレーションを行い、混雑が発生する前に対策を提案したり、起こりうる事態を予測したりして対応できる点だ。これこそが、高輪ゲートウェイシティを最先端の都市にする最大の特徴である。 現在、日本各地でスマートシティの実現に向けた取り組みが進んでいるが、高輪ゲートウェイシティは単なる実証実験の場ではない。ここでの成果は、今後の日本の都市インフラのモデルとなり、その経験は都市開発に生かされていくだろう。 しかし、この最先端の都市にも課題がある。 ひとつは、近年特に注目されているデータ収集とその利用に関する問題だ。これは都市OSだけでなく、さまざまなデータ活用の試みで発生する課題であり、 「何のためにデータを集めているのか」 「どこまで共有されるのか」 に違和感を抱く人が出てくるのは避けられない。もちろん、事業者側はこの点にも配慮して進めているが、それでも、駅や街を利用しているだけでデータが収集されていることに不安を覚える人がいるだろう。 また、技術依存のため、システム依存やハッキングによる機能停止のリスクも常に存在している。
人材と資金の壁
さらに課題となるのは、人材と資金だ。KPMGコンサルティングの都市OSに関する論文によれば、パーソナルデータを活用して参画事業者から収益を上げるビジネスモデルは、有用なサービスを提供することはできても、 「マネタイズが難しい」 という課題が明らかになっている。ここまでの話を聞くと、コンピューターが自動的にデータを収集し、提供するSF的なイメージが浮かぶかもしれない。しかし、実際にはそのシステムを問題なく稼働させるためには、多くの企業と高度なスキルを持つ専門家の協力が欠かせない。 さらに、技術は日々進化し続けるため、専門知識や機械を常に更新するためには、継続的な投資が必要だ。しかし、データを活用したサービスがどれだけ利益を生むかは、現時点では明確ではない。 加えて、100年先の地球益を担うとされる高輪ゲートウェイシティにおいては、失敗は許されないだろう。 この都市開発は、将来的なモデルケースとなるはずだが、皮肉なことに、その革新性は一般にはほとんど認識されていない。多くの人々には 「また東京に新しいビルと商業施設ができる」 という、普通の再開発にしか見えていないのが現状だ。この背景には、革新的な技術やサービスを一般の人々にわかりやすく伝える難しさがある。プレスリリースなどの情報発信でも、専門的な説明が多く、一般の人々の理解や関心を十分に引き出せていないのが実情だ。 取材を通じて多くの資料を参照したが、最新の技術やサービスを伝える際には、もっとわかりやすい説明方法が求められるだろう。例えば、「高輪ゲートウェイシティ」と「TAKANAWA GATEWAY CITY」のような表記の使い分けでは、アルファベットを使わない方が読者の理解を助けるかもしれない。 今後、この革新的な都市開発の価値をより多くの人々に理解してもらうためには、専門的な内容をいかにわかりやすく伝えるかが重要となるだろう。