能登半島の大雨災害、流木・土砂が橋にひっかかり浸水被害拡大…「中小河川近くではより早い避難必要」
能登半島の大雨災害で、中小河川の橋に大量の流木や土砂が引っかかることで流れが激しくなり、住宅の浸水被害が拡大したとみられることが専門家の調査で分かった。都道府県などが想定している洪水浸水区域は、こうした影響を考慮していないため、中小河川ではより早い避難が必要だと指摘している。
気象庁によると、石川県輪島市では9月21日午前9時22分までの1時間に、観測史上最大の121ミリの雨量を記録した。県内では28河川が氾濫した。
4人が犠牲となった同市の塚田川は、近隣住民によると、午前9時半までの約30分間で水位が急上昇した。住民が撮影した動画では、小さな橋の下が、上流から流れてきた木や土砂でふさがれていた。川は大きくそれて橋の外側にある道路に流れ込み、住宅を直撃。木造住宅が2階付近まで浸水し、9時34分頃に数軒が流されて瞬く間に全壊した。
現地調査を行った京都大学の竹林洋史准教授(河川工学)は、雨で山の斜面が崩れ、流木と土砂が橋に大量にひっかかり流れが大きく迂回(うかい)したことで、被害が拡大したと指摘する。
当時の川や橋の状況から推定した住宅が浸水した深さは、最大約2・5メートルに及んだ。「橋がなかった場合」のシミュレーション(想定実験)によると、浸水は1・1メートル程度で、流速も半分程度で収まったとみられる。
2017年の九州北部豪雨や19年の東日本台風でも、橋に流木がひっかかったことで被害が拡大したという報告がある。
都道府県などが中小河川の洪水浸水想定区域図を作成する際に参照する国土交通省の手引は、橋に流木が集まることによる浸水の深さへの影響は加味されていない。同省の担当者は「問題は認識している。対応は検討中だ」としている。
竹林准教授は「橋の影響を考慮して浸水区域図を作り、住民に注意を呼びかける必要がある。中小河川近くの住民は、大雨の際には早めに避難してほしい」と話している。