「トランプ勝利」が“第三次世界大戦”を食い止める? 波乱を呼ぶ大統領は「今そこにある世界の危機」にどう対峙するか
圧倒的勝利だったトランプ
アメリカ大統領選挙が11月5日に行われた。共和党のドナルド・トランプ前大統領と、民主党のカマラ・ハリス副大統領が争った選挙は、投開票が始まる前日まで数多あるアメリカの世論調査で「かなりの接戦」という見方が大勢だった。 【写真】前職時代には“濃厚な日米関係”を体現していたトランプ新大統領の思い出ショット
ところが、蓋を開けてみると、ノースカロライナ州、ジョージア州、ペンシルベニア州と選挙の行方を決める東部の激戦州で次々と勝利したトランプ前大統領が、あっという間に勝利を確保。第47代大統領として、ホワイトハウスに戻ることとなった。 圧勝となった最大の要因は、現バイデン政権に対する経済分野などでの不満と、それを改善できる希望をハリス候補が示せなかったことだ。加えて、「女性」「マイノリティ」というハリス副大統領の特徴が、女性やマイノリティに響かず、この層の得票数が伸びなかったことがある。さらにトランプに比べて圧倒的に「若い」アピールも中途半端で、若者を取り込めなかった。 今回の選挙では、アメリカ国内の不法移民の問題やインフレ状態の経済、人工中絶の問題などが争点となったが、米国外に目をやるとこの大統領選の行方が世界情勢の安定にとって非常に重要なものだったことはあまり語られていない。 実は、トランプ前大統領の復活によって、水面下で燻り始めていた「第三次世界大戦」の勃発を回避することができる可能性が高まったと言えるのだ。 その「第三次世界大戦」の様相を呈したのは、ウクライナである。ウクライナと言えば、2022年2月24日にロシアが軍事侵攻を行い、ジョー・バイデン政権下のアメリカやNATO(北大西洋条約機構)、日本など西側諸国が手を組んでウクライナを軍事的・経済的に支援してきた。日本は岸田文雄前首相が稀に見る積極さでロシアへの経済制裁に加わり、反ロシア姿勢を鮮明にしている。 以降、ウクライナでは欧米諸国とロシアが争う構図になってきた。一方のロシアは、侵攻直前の首脳会談で「深い友情関係」を約束した中国から戦闘に活かせる衛星情報などで支援を受けてきた。中国は否定するが、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は「ロシアが輸入する工作機械の約70%、マイクロエレクトロニクスの90%は中国から来ている」とし、それらが「ロシアが兵器、戦車、装甲車両、ミサイルを製造するために使用される」と指摘する。 ロシアはさらに、イランからドローン(無人航空機)やミサイルなどを入手し、北朝鮮からも短距離ミサイルなどの兵器や備品などを調達してきた。つまり、アメリカやNATO、日本などがウクライナを支え、中国やイランなどがロシアの支援を行い、すでに「代理戦争」の様相を見せていた。