【独占】なぜ巨人OBの川相昌弘氏は”ライバル”阪神の臨時コーチを引き受けたのか…「阪神がするべき野球とは」
川相氏は、守備の指導と並行してバント指導も進めた。投手、野手の2班に分けてバント講座を開講した。 川相氏には“世界記録”を生み出したバント3箇条がある。 (1)まずは転がせ!「空振り、フライはダメ」 (2)次に方向を選べ。「自分のやりやすい打球方向を決める」 (3)打球を殺すのは最後でいい。「無理に芯を外してバットに当てて打球の勢いを殺すことはしなくていい」 これが川相氏のバントに対する基本的な考え方だ。 「いつでも、どこでも、この話をします。まず一番は転がすこと。次にどこに転がすか。漠然とこの辺に転がしたり、闇雲にこっち側に決めようとするのではなく、少々強くても成功する場所を知っておけば、気持ちに余裕が出る。打球の勢いを殺すのは最後。もちろん、確率を上げるためには継続して練習するしかないんです」 実を言うと昨年の阪神の犠打成功率は.819でリーグ1位だった。しかし、9回無死2塁というような重圧のかかる場面での成功率はどうだったのか、というと疑問符がつく。 「成功率が高いのはいいこと。でも、その年で終わりではないわけで、毎年精度を高めていかないといけないし、チームとしての意識も常に高めていくことが大事なんです」 気の早い虎ファンは”川相効果”に期待を寄せるが、川相氏は、当然、今回の指導が即結果に結びつくとは考えていない。実際、紅白戦の初戦では大山悠輔と、新人の中野拓夢が初歩的なエラーを犯して失点につながった。 「これから実戦的な練習に入れば、どんどん課題も出てくると思います。そのとき、ひとつひとつに対応し確認していく。キャンプを経て開幕までしっかり準備をして、シーズン中も同じ基本練習の繰り返しです。いい結果を出し、それをまた繰り返し続けて行く。何度も言いますが、継続が大切なんです」 そして、川相氏は、こうも言う。 「私から余計なことは言いませんが、求められれば守備とバントだけでなく何でも伝えようと思っています。例えば、反対方向への打撃、進塁打などについても伝えていきたい」 阪神にとってはありがたい提案だろう。 守備、バントの名手として知られる川相氏が、どのようにしてプロの世界を生き抜くことができたのか。阪神の選手は、守備、バント技術以上のものを川相氏から学びとる必要もある。沖縄・宜野座のグラウンドに目から落ちた”ウロコ”の数が増えれば増えるほど阪神は強くなる。 巨人、中日時代に甲子園でプレーし続けてきた川相氏は「甲子園で対戦するときの阪神は強い」と感じていた。 だから最後にこんなメッセージを送る。 「とにかく、甲子園を本拠地にしているんだから土のグラウンドを味方にして確率良くアウトを重ねることです。自分たちで自滅するのではなく相手チームがミスして勝手に転んでくれるような野球をやらないといけないと思います」 これこそが阪神が今季“打倒巨人”を果たし優勝するための条件だろう。 (文責・山本智行/スポーツライター)