【独占】なぜ巨人OBの川相昌弘氏は”ライバル”阪神の臨時コーチを引き受けたのか…「阪神がするべき野球とは」
迷いはしたが、ライバル球団を強くすることが、ひいては、球界全体のレベルアップ、発展につながるのではないかとも考えた。それが、ずっと球界をリードしてきた巨人軍のOBとしての使命でもある。それでも自分の一存だけでは決断することはできず、巨人の山口オーナーにお伺いを立てたという。 「阪神で臨時コーチをすることを許可してくれた巨人のオーナーにも感謝しています。だからこそ、責任があるし僕がこれまで経験したこと、感じていることを全部伝えたいと思いました。何も隠すことはしません」 依頼された最重要課題は、失策数が3年連続リーグワーストの守備の強化である。矢野監督からも電話で「守備をお願いします」と直接、依頼された。それ以上の細かい話をあまりしなかったというが、それだけ信頼されている証だろう。 川相氏は言う。 「主に内野、二遊間を見ることになりますが、それだけではない。連携プレー、カットプレーと守備は全体的に絡んでくる。バッテリー、内外野全員が守備に対する意識を高めないといけない。そこに向け、個々の守備力を上げること。いまは手順を追って取り組んでいます。やっていることは基本中の基本。キャンプは基本を見直す機会でもあるし、それを継続して行っていかなければならないのです」 昨季の阪神は85失策。12球団ワーストである。今回、川相氏は臨時コーチをスタートするにあたって球団から、その失策シーンをまとめた「エラー特集DVD」を渡された。川相氏は、それを何度も繰り返しチェックした。 「過去5年で4回がリーグワースト失策でした」と苦笑いする。 「まず打球を捕らないことには次に投げられない。大事なのはボールを捕ること。そのためには正しいボールへの入り方、グラブの差し出し方をして、捕球成功の確率を上げ、そこからステップして送球につなげる。そりゃプロに入ってくるぐらいだから適当にやっても捕れますよ。しかし、基本を繰り返すことで、その確率は高まる。野球で同じ打球はまずないし、土でも人工芝でもボールは思い通りに来ない。自分は変化しないで変化するボールを捕ることが大事。基本を怠り、油断したり気を抜くとミスが出るんです」 阪神のエラーが多い理由のひとつは、「捕る」動作を含めて、その守備の基本が徹底されていないことだという。 今回のキャンプインに際しては、前夜に守備、バントを担当する久慈照嘉、藤本敦士コーチとミーティングをして「何をどう教えるか」の考え方を共有した。指導することに遠慮はしないが、現場コーチの理解がなければ結果にはつながらない。 「僕はこの時期しかいないわけで、継続してやってもらうためには選手はもちろん、コーチにも理解してもらわないといけない。大切なのは継続することですから」