「そのバイク、ジャンル不明!!」80年代前半の国産車は、謎バイクの宝庫だった
■ホンダ ジャイロX(1982年10月発売)「今なお続くスリーターシリーズ唯一の成功例」 ホンダの前1/後2輪のスリーホイールモデル、スリーターシリーズの第2弾で発売されたのが、実用的な荷台を前後に備えたジャイロX。スリーター系モデルの中で、今に続く唯一の成功例だ。 ワンタッチパーキングや、ノンスリップデフ、スイング機構など76(特許、意匠、実用新案の出願合計件数)ものホンダ独自の先進技術が入っているというジャイロシリーズは、屋根付きのキャノピーなどバリエーションも拡大し、エンジンは空冷2ストから水冷4ストに変更され、各部を進化させつつ現在も販売される。 異例の長寿シリーズながら、ほかにライバルモデルが不在のためカテゴリーは生まれなかったが、ジャイロがそのカテゴリーを象徴する存在とも言えよう。初代は空冷2スト単気筒搭載で、最高出力5ps、当時価格は17万9000円。 ■ホンダ ビート(1983年12月発売)「突き抜け過ぎた!? 高感度スクーティング」 スクリーン付きで大きく傾斜したカウルのフロントノーズが目を引き、スクーターカテゴリーから突き抜けたビート。ビンビン反応「高感度スクーティング」をキャッチコピーに、攻めたデザインのボディだけでなく、パフォーマンスも飛び抜けていた。 50ccスクーター初となる水冷2スト単気筒エンジンを搭載し、最高出力は当時の原付の自主規制値上限である7.2psを誇ったのだ。 そして、左足ペダルでトルク特性を切り替える排気デバイス「V-TACS」も同車の大きな特徴だった。低回転域でトルク感を補助するサブチャンバーを中回転以上で閉じ、高回転域での高出力をねらった機構だ。 また、密閉型MFバッテリーや2灯式ハロゲンヘッドライトなども2輪車として世界初採用。「技術のホンダ」が詰まった意欲作で、原付スクーターレベルを突き抜けた内容だったものの、15万9000円という高価な価格とスクーターを越えたデザインが、若者には刺さらなかったのか──。 後にも先にも見かけない同車は、スクーターなのにスクーターらしくないという意味で、カテゴリーレスなモデルと言えるかもしれない。 まとめ●モーサイ編集部・阪本 写真・カタログ●八重洲出版アーカイブ