中間管理職が抱えている「メンタル不調」ほど、企業は対応が難しい理由
企業において、社員のメンタル不調は大きな課題となっています。特に中間管理職は、上司と部下の間で板挟みにあい、心身ともに大きな負担を抱えているケースも珍しくありません。メンタルヘルス対策について、企業はどう考えるべきか。書籍『社員がメンタル不調になる前に』の一節を紹介します。 【図表】精神疾患を有する総患者数の推移 ※本稿は、藤田康男著『社員がメンタル不調になる前に』(日本能率協会マネジメントセンター)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
カウセリングが有効か? コーチングが有効か?
相談とは、人に話を聴いてもらう行為です。話を聴く人は、相談者の話を聴くことで支援します。このような支援を対人支援サービスと言います。この対人支援サービスには、アプローチの仕方がいくつかあります。ここでは、カウンセリングとコーチングついて、私の言葉で説明します。 カウンセリングは、気分が落ち込んだ時に、本来の水準に戻すことを目的に利用するものです。心の状態を「マイナスからゼロに戻す」などとも表現されます。カウンセリングを行うカウンセラーは、相談者の心理的な問題に対応するために、心理学や精神医学、キャリア開発、労働関連法の専門的な知識を持っています。 それに対し、コーチングは通常の心理状態から、より良い状態へ向上させる目的で利用します。心の状態を「ゼロからプラスに上昇させる」などとも表現されます。コーチングでは、目標設定やアクションの管理、価値観の確認などを通じて行動変容を実現させます。 また、コーチはコーチングに関する知識を持っていますが、必ずしも心理学や精神医学の専門的な知識を持っているとは限りません。このように、カウンセリングとコーチングは同じように相談者に伴走しますが、そのアプローチ方法や持っている知識に違いがあります。 つまり、カウンセリングとコーチングの違いは、相談者の心理状態によって使い分けられるべきものなのです。では、今のあなたにとって、また、相談者にとって、カウンセリングが有効なのか、コーチングが有効なのか、分かるものでしょうか......。 恐らく、自分で分かる方、判断できる方は、これまでにカウンセリング、コーチングを受けた経験から知識として理解している、または、ご自身がカウンセラーもしくはコーチの方で、更に、ご自分の状態も理解している方だと思います。今の日本の状況で、そのような方はまだまだ少ないと思います。 少し乱暴な言い方になりますが、多くの相談者は、自分自身に適した対人支援サービスが何なのか分からないのです。ですから、まずはアプローチの手法にはこだわらず、話をしてみる、話を聴いてみるようにしましょう。その後、自分でそれぞれの体験から、どれが適しているのか否かを判断すれば良いのです。 人事労務担当者やマネジメント職の方の中には、アプローチ方法の違いを気にされる方が多くいらっしゃいます。その違いを気にするあまり、社員からの相談を拒む結果になってしまったり、社員に対して相談するハードルを上げてしまったりします。 まずは、相談してもらう、その行為自体が大切です。その上で、ちょっと違うかな? と思ったら、しっかりと話を聴いた後で、適しているサービスを案内すれば良いのです。