中間管理職が抱えている「メンタル不調」ほど、企業は対応が難しい理由
中間管理職のモヤモヤが一番難しい
相談対応として一番難しい社員の属性は、なんといっても中間管理職でしょう。中間管理職の方は、組織上、上司と部下に挟まれ、自分のルーティン作業と例外処理、並行部署との連携作業など、複数の業務をこなさなくてはなりません。なおかつ、多くのステークホルダー(利害関係者)に囲まれ、影響を受けつつ与えつつ、という立場です。 また、一般的に、中間管理職になる頃には、プライベートでも、結婚、子育て、介護と目まぐるしい変化の真っ只中であるはずです。このような多様な環境では、社員自身も何にモヤモヤしているのか、自分がモヤモヤしている真の原因は何なのか、判断しにくいのです。中には忙しさのあまり、自分の置かれている状況の言語化にさえ苦労する方もおられます。 更に、中間管理職の方には、ステークホルダーが多いことにも注意が必要です。高い確率で複数のステークホルダーの板挟みになっており、自分では優先順位がつけられない状態になっています。このような社員にこそ、人事労務担当者はより意識して、相談を受ける姿勢を示していくことが必要です。 また、中間管理職の方のモヤモヤが一番難しいのは、中間管理職を取り巻く環境が複雑だからという点だけではありません。多くの場合、モヤモヤが晴れた先に何らかの大きな意思決定がなされる可能性があるからです。 相談対応は、何らかの解決策を提示するものではありません。また、仮にその場で何らかの意思決定をするにしても、その意思決定をするのは相談者で、相談を受ける人事労務担当者ではありません。 しかしながら、甲乙つけ難い事象の話を聴き、相談者の心境の変化に寄り添っていると、あたかも相談を受けている人事労務担当者が一緒に意思決定をしているような錯覚に陥ります。 また、その意思決定を促しているように感じるかもしれません。話を聴きながら、知らず知らずのうちに、「そんなことは自分には決められない」「その意思決定に関わりたくない」と思うことがあります。これは、無意識のうちに自分の対応が、話を聴いているのではなく、意思決定を促している、と感じるからです。 人事労務担当者の方であれば、相談者の意思決定を促すような深入りはすべきでないと考えるでしょう。私もそう考えます。ですが、ここで意地悪な質問をします。 相談対応の中で、相談者が明らかに間違った意思決定をしようとした場合、あなたは止めることはできますか? また、止めるように意見を述べたとして、相談者は間違った意思決定を覆すでしょうか。更に、相談後、そのことを心の中に秘めておきますか? 然るべきレポートラインに、相談者の許諾なく報告しますか? 中間管理職の方と話をする際は、そう言った覚悟が必要です。中間管理職の方からの相談数は少ないのが実態ですが、相談があった際は、事前にレポートラインの確認や、相談者の許諾なく報告するべき判断基準をグループ内で目線合わせしておきましょう。 守秘義務と安全注意義務、会社のVMV(ビジョン、ミッション、バリュー)、顧客への責任に照らし合わせて、もっとも社会的に意義のある行動を目指すことが大切です。不正や横領、改ざん、粉飾などが見え隠れすることもあります。くれぐれも、人事労務担当者のあなた個人が責任の重みに押し潰されないように、組織の機能を果たすことを心掛けてください。