ウクライナ兵の素顔は"一児の母"...戦時下で見た「人々の穏やかな日常」
メディアに映らない戦場の姿
戦争取材とは、爆撃や銃撃が起きているところに突っ込んでいって、撮影をするような仕事ではありません。 戦争中の情勢は刻一刻と変わっていて、現地に入り、現地の方と生活を共にする中で突然、市街地で銃撃が起きるなど、突発的な事件に巻き込まれていく。いきなり戦場に出かけていって写真を撮るぞと思っても、どこで戦いが始まるのか、実は事前にわかることは少ないんです。 たとえば、この動画は2001年から始まったアフガニスタン紛争の取材で、アフガニスタン国内で撮影したものです。 https://d21.co.jp/special/978-4-7993-2980-1/movie03/ 目の前にロケット弾が撃ち込まれた。 アメリカを含む多国籍軍対アフガニスタン・タリバン政権の戦い。これはタリバンの攻撃、そして銃撃戦が始まった様子を撮影した動画です。これも、事前に「ここに攻撃がある」と情報を得て撮影したのではなく、たまたまその場面に遭遇して、撮ることができたものです。 もちろん事前に情報を仕入れて、あらかじめ取材のテーマや切り口の見当をつけた状態で現地に入ることはあります。ただ、その場所に行ってみると想像とはまったく違う景色が広がっていることがある。ウクライナ戦争でも、実際に現場に足を踏み入れるまでは、どのような状態になっているかわかりません。 残虐なロシア軍。ジェノサイド。目の前で次々と命が失われていく戦争の現実。その反面、肥沃な大地を持つウクライナ。取材中に、その美しさに触れる機会もたくさんありました。 ウクライナの土地は作物の栽培に適しているといわれます。トウモロコシ、サトウキビ、ひまわり油、特にパンやパスタの原料となる小麦は、世界トップクラスの産出量を誇っています。ヨーロッパの穀倉地帯と呼ばれ、農村にはひまわり畑や小麦畑が広がる美しい光景があります。 また街中に教会がいくつも点在しており、政情が不安定な中でも休日になると、静かに祈りを捧げる市民たちの姿を見ることができます。 キーウはメルヘンな建築物の街並みが広がる芸術の都です。夜になるときれいに着飾った人たちがオペラ劇場に集まり、音楽に耳を傾けています。 キーウ中心部、ドニプロ川沿いには美しい森のような公園があり、恋人たちが手をつないで歩いている。 暗くなってくると食事の時間です。ボルシチやロールキャベツ、肉でつくった餡を皮で包んだ水餃子のようなものを食べながら、ワインを片手にゆっくりと語り合っている。 戦争が始まる前は、世界から、日本からも観光客がたくさん訪れていた、美しい国。 さまざまな魅力があります。 都心の街中にはコーヒースタンドがたくさんあって、多くの人がコーヒーショップで買った大きなサイズのホットコーヒーを手に持ち、ごくごく飲みながら歩いている。 そうした姿にも親近感を覚えます。