ウクライナ兵の素顔は"一児の母"...戦時下で見た「人々の穏やかな日常」
女性兵士の素顔はふつうのお母さん
キーウの取材中、こんなことがありました。 取材を終えて、滞在していた家に戻ろうとしたところ、道に迷ってしまいました。すると困っている僕を見かけたウクライナ国軍の女性兵士が、「どうしたんですか」と声をかけてくれました。年齢は30歳前後。穏やかで優しそうな人でした。「迷ってしまった」と伝えたら、わざわざ自分の車を出して、僕を家まで送ってくれたのです。 車に乗せてもらっている間、彼女といろんな話をしました。彼女はウクライナ国軍の中で、兵を管理し統率していく管理職のような立場の人だといいます。同時に、子どもを持つ母親でもありました。 もちろん軍の内部のことについて、詳しく話すことはありませんでした。でも、いまのキーウの状態や国民の気持ちについて聞いてみると、自分の思いを話してくれました。 戦争は急に起きたのではなく、それまでもロシアは繰り返し圧力をかけてきていたこと。ウクライナにはいろんな国の人たちが暮らしているので、いろんな問題を突き詰めていくと衝突が起きてしまいかねない土台があること。 だからこそ、ウクライナで暮らす人たちは多様性を重視しながら、寛容な姿勢をもっていろんな民族の人たちと共生しようとしていること。そうした暮らしを支えるのが、ウクライナ国軍のひとつの役割だと彼女は考えているようでした。 国軍で任務にあたる兵士というと、鍛え上げた身体で、激しく銃を乱射して......といったイメージが浮かぶと思います。でも彼女はとても穏やかで冷静。そして、どこの家庭にもいそうなふつうのお母さんでした。 一方で、ロシア軍の兵士はどんな雰囲気だったのか。 ロシア軍は徴兵された若者たちに加えて、義勇兵として参加している外国部隊、さらにはお金で雇われたプロの戦闘兵士もごちゃ混ぜになって部隊を編成していました。 「軍事訓練」といわれてベラルーシにやってきた若者たちが、気づいたらウクライナに入っていて、戦闘に巻き込まれていたというような声も、拘束されたロシアの若い兵士から聞こえています。