ウクライナ兵の素顔は"一児の母"...戦時下で見た「人々の穏やかな日常」
戦場カメラマンである渡部陽一さんは、これまで世界中の戦場を取材し、戦場で暮らす人々をその目に映し、生きた声に耳を傾けてきました。悲惨な戦場についてはもちろんですが、戦場に生きる人々の普段の姿も数多く写真に収めています。 ウクライナ戦争のなかでも、ウクライナに訪れ、戦争の中にある日常に触れてきました。悲惨な戦場や戦況ではなく、ウクライナの人々の柔らかな日常について語ります。 ※本稿は、渡部陽一著『晴れ、そしてミサイル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
兵士で溢れるキーウの街
都市部のキーウは、ウクライナ軍の管理下で、普段と近い生活ができている。しかし、本当の意味で自由に暮らせるわけではありません。 戦争が始まってからというもの、都市部のインフラは不安定になり、突発的に停電になったり、水が出なくなったりすることがたびたびありました。 またキーウの街はウクライナの兵士で溢れていました。日本でいうと東京駅や日比谷公園のような人が大勢集まる場所に、武器を持ち、全身武装した兵士たちがうろうろして、あちこちで検問をしている様子を想像してみてください。 街を好きに歩いて、買い物をしたりお茶を飲んだりといった暮らしを送ることはできるものの、常に人々が心の中でどこか不自由な思いを抱いている様子がイメージできるでしょう。人々がふつうに暮らしている街を兵士が行き交う風景は、ウクライナに限らず、戦時下にある国に共通して見られる自由を奪われた風景のひとつです。 ただし、ウクライナの取材で特徴的だったことがあります。女性兵士の姿を多く見かけたことです。たとえば、次のような地下鉄の駅。 こうした地下鉄の車両に女性兵士がたくさん乗ってきて、乗客に不審者がいないか確認し、身体検査やパスポートの確認をしていました。ボランティアや義勇兵など、さまざまな方法で志願した女性兵士が、ウクライナを守るために自分たちにできることをやっていこうとする意志を僕は感じました。