トヨタが、人口わずか2万5000人の「フランスの片田舎」を新挑戦の場に選んだワケ
フランス小都市で描くモビリティの未来
パリから南へ約350kmにあるヴィシー市。第2次世界大戦中にフランス政府が置かれた場所として知られているが、最近ここでトヨタがインクルーシブ(包摂的)なモビリティに取り組み始めた。 【画像】「えぇぇぇ!?」 これがフランスの「ヴィシー市」です! 画像で見る(11枚) 以前、トヨタ・モビリティ基金は、ヴィシー市と三つのスタートアップ企業とパートナーシップを結んだ。この小さな町で何を目指しているのかが注目されている。 世界でも有数の自動車メーカーが、なぜ人口2万5000人に満たないフランスの地方都市を新しい挑戦の場に選んだのか。その理由を詳しく見ていこう。
9.2ha施設から始まる新時代の移動支援
トヨタが「誰も取り残さないインクルーシブなモビリティ・ソリューション」を目指して動き出した。 移動が困難な人たちのために、完全に適応する新型衛星利用測位システム(GPS)を開発している。このプロジェクトの拠点は、ヴィシー市にある9.2haの広大な施設「Le CREPSトレーニング・キャンパス」だ。 開発の一環として、身体障がい者向けに屋内外のナビゲーション機能やヴィシー市への主要ルートをマッピングしている。「コネクテッド・パーソナル・モビリティ」というインターネット接続型の個人モビリティ技術を活用し、あらゆる地形で使えるマッピング機能を強化しているのが特徴だ。 これにより、最適なアクセスルートを正確に割り出し、交通機関やMaaSプロバイダーが誰でも歩行や移動をしやすくなるようサポートする。 この完全適応型GPSは、身体障がい者や移動が不自由な人々を対象にした初の試みとなる。ヴィシー市で実現するこのソリューションは、他の地域でも応用可能なベストプラクティスとして期待されている。
障がい者の未来を変える三社連携
トヨタオープンラボがヴィシー市と協力して選んだ三つのスタートアップを紹介する。 Andyamoは、移動機能が低下した人のために作られたマルチモーダル・ルート・プランナーを提供している。このサービスのミッションは、すべての人の移動能力を高め、市民の自立を支援することだ。自動車に頼らない移動手段として、徒歩や公共交通を活用したソリューションを開発している。 Evelityは、屋内外を網羅した初の包括的な道案内アプリだ。障がいの有無を問わず、ユーザーに合った最適な移動手段やルートを提案する。複雑な場所でも詳細なナビゲーションが可能で、日常生活の利便性を高める。 Genny Factoryは、都市モビリティや障がい者支援、パーソナル・トランスポーターの分野で活躍している企業だ。セルフバランス型のモビリティデバイス(電動車いす)を製造しており、革新的な「ジェニー・ゼロ」技術を活用して、位置や地形を継続的にマッピングしながら移動や回避に関する情報を提供する。これにより、歩行者エリアや屋内空間でも自由で自立した移動を可能にしている。 これら3社はそれぞれの技術や専門知識を組み合わせ、都市環境で身体障がい者のナビゲーションやアクセシビリティを向上させるための総合的なアプローチを進めている。 トヨタ・モビリティ基金のヨーロッパ・ディレクター、モニカ・ペレス・ロボ氏は、 「移動に制限がある人々が、自信を持って自由に移動できるインクルーシブなモビリティ・ソリューションを、未来に残るレガシーとして実現したいと考えている。地元のコミュニティーやパートナーと緊密に連携し、持続可能なソリューションの開発を目指している」 と語っている。