トヨタが、人口わずか2万5000人の「フランスの片田舎」を新挑戦の場に選んだワケ
障がい者支援で進化するヴィシーの未来
ヴィシーのフレデリック・アギレラ市長はこう話す。 「ヴィシーはすべての住民のアクセシビリティとモビリティを向上させることに力を入れている。トヨタ・モビリティ基金と選ばれたスタートアップ企業と協力し、包摂性を促進し、身体障がい者の生活の質を改善する革新的なソリューションを開発できることを誇りに思っている」 ヴィシーは天然水の医療効果が知られ、古くから温泉療養地として栄えてきた。現在でも年間約20万人が訪れ、ウェルネス産業が地元経済を支えている町だ。身体に障がいを抱える人々が暮らし、訪れる場所としての役割も果たしている。 視点を広げると、フランスが属する欧州連合(EU)では、 「約30%」 の人が移動に困難を抱えている状況だ。 トヨタの取り組みには、新技術の開発やスタートアップの育成、さらには地方創生といった側面があるかもしれない。だが、究極の目標は、すべての人にとってアクセスしやすいインクルーシブな世界を創ることにある。その目標を胸に、ヴィシー市では官民が一体となり、障がい者のモビリティを積極的に推進するプロジェクトを進めている。
タクヤ・ナガタ(ライター)