澤穂希(元女子サッカー代表)の名言「苦しい時は、私の背中を見て」を振り返る──パリ2024オリンピック特集「レジェンドが名場面を振り返る」
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澤穂希が振り返る「私のオリンピック」
7月26日のパリ五輪開幕を前に、レジェンドたちがオリンピックの思い出を語る短期集中連載がスタート。石川佳純(卓球)、澤穂希(サッカー)、有森裕子(マラソン)、内村航平(体操)の4名のオリンピアンが、それぞれのオリンピックを語り尽くす。 ──初優勝した2011年のワールドカップの翌年、ロンドン五輪のプレッシャーはそれまでの五輪と別モノだったのでしょうか? 2011年のワールドカップで優勝していたので、「ロンドンオリンピックも金メダルを獲るんじゃないか、獲れるだろう」という世間の期待は感じていました。プレッシャーもありましたが、ワールドカップが終わってすぐ、過密スケジュールの中でオリンピックのアジア予選を戦ったので、あれこれ考える余裕がなかったのも事実です。オリンピックが終わって、銀メダルを獲った後に、「相当なプレッシャーだったね」ってチームメイトと振り返った記憶はあります。 ──確かに、「メダルは当たり前」のような空気はあったかもしれません。 プレッシャーは大なり小なり感じていたとは思うんですけれど、その時はとにかく必死で。ワールドカップで優勝してから、注目度が急激に上がって、自分たちも「勝つのが当たり前」という感覚があったので、そんな中で勝ち続けることの難しさ、結果を残し続ける難しさを感じましたね。 ──澤さんにのしかかる重圧は相当なものだったと推測します。 団体競技はチームとして結果が問われるものなので、個人競技に比べると種類がまた違うとは思いますが、私自身は、結果よりも自分大好きなサッカーを楽しむことを大切にしていました。「結果が出なかった時はどうなってしまうんだろう」というプレッシャーを感じながらも、「結果を残してやる」という思いのほうが強くて。とにかく自分のコンディションを整えて挑んだ結果を素直に受け入れるしかない。もし自分のコンディションが悪かったとしても、それを受け止める。逆に恐れてしまうと自分の良さが発揮できなくなりますから。 ──澤さんが最初に出場したオリンピック、アトランタ大会の時は高校生でした。 目標にしていたオリンピック出場だったので、とにかくうれしかったですね。もちろん緊張しましたけれど、恐いもの見たさにガンガンぶつかっていきました。とにかく、うれしいっていう気持ちが一番で。 ──2004年のアテネ大会はベスト8でした。 立場が中堅になり、上の立場の人の気持ちも、下の選手の気持ちもわかるようになると、「チームのために自分は何ができるか」を、すごく考えるようになりました。ベテランになればなるほど、今まで経験してきたことを、中堅や若手に伝える役割が求められます。言葉だけでなくしっかりプレイとして背中で見せるのが、自分のスタイルでした。 ──「苦しい時は、私の背中を見て」。澤さんの名言です。 初めて言葉にしたのは、2008年の北京オリンピック、ブラジル、アメリカ、ドイツとベスト4に進出した時だったと思います。世界の強豪チームの中にいきなり日本がポツンと入ってしまった感覚でした。ずっと目標にしてきた世界大会のメダルが目の前にある。4チーム中3チームがメダルを手にすることができるわけで、自分たちのレベルを冷静に考えると、獲れるか、獲れないかギリギリのところにいたように思います。とにかくメダルが欲しかった。「最後まで諦めず、最後のホイッスルが鳴るまで走り続ける。苦しいことがあっても、最後まで笛が鳴るまで走り続ける」という覚悟を伝えるために出た言葉でした。後輩たちが苦しいと感じた時には「自分の背中を見て、最後まで諦めないでほしい」という思いを込めました。 ──北京オリンピックの3位決定戦、相手はFIFAランキング2位だったドイツ。勝てば初のメダル獲得という一戦でした。あのセリフは用意したものだったのですか? 自然と出た言葉です。子どもが親の背中を見て育つように、日本の女子サッカーのレベルがそこまで高くない時代、先輩たちが諦めない気持ちで戦っている背中を見てきましたから、今度は自分が目標でありたいという思いがあって。一方で、自分の経験に対する自信もあったので、後輩だけではなくて、先輩たちに向けて発した言葉でもありましたね。
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