新興国、ボラティリティー想定し債券発行急ぐ-8月の教訓も後押し
(ブルームバーグ): 新興国市場の借り手が9月に入り、米国の市場を揺るがし、借り換え計画を狂わせかねないボラティリティーに対する防衛策を強めている。
月初の5日間だけでも、これまでの9月のどの月初よりも多い債券が起債された。ブルームバーグがまとめたデータによると、公社債発行額は6日までに280億ドル(約4兆円)に達した。昨年の同時期は120億ドルだった。
多くの発行体は、11月の米大統領選に加え、パニックに陥った投資家が新興国通貨や日本株などから一斉に逃げ出した8月5日のような成長を巡る不安に先行しようとしている。
JPモルガンの中東欧・中東・アフリカ債シンジケート責任者アレクサンダー・カロレフ氏は、「ほとんどの発行体が潜在的なボラティリティーの前に市場に出てくるという非常に良い選択をした。今後数週間は、リスクイベントのために発行が大幅に減少するだろう」と述べた。
ドル建て公社債を対象としたブルームバーグの指数によれば、新興国市場の発行体は平均6.5%と、引き続きここ2年間で最も低い利回りの一角を享受している。
多くの発行体が今年の資金調達需要をすでに満たす一方で、利下げで利回りがさらに低下する前に投資家は喜んで資金調達に応じそうだ。アブダビ国営石油(ADNOC)やインドネシア、ウルグアイなどが債券発行に動いている。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け、積極的な緩和を求める声が高まっている。6日に発表された8月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが予想を下回った。米金利のボラティリティー指標は、乱高下の可能性を示唆している。
バンガード・アセット・サービシズの新興国市場アクティブ債券部門共同責任者ニック・アイジンガー氏は「新興国市場にとって大幅な景気減速が悪いのは明らかで、今が発行に動く良いタイミングだ」と指摘した。
アビバ・インベスターズのアナリスト、カルメン・アルテンキルヒ氏は、「目前に迫った米国の選挙と、米国の成長懸念が高まればスプレッドが急拡大するリスクを発行体は意識しているだろう。8月初旬は、市場がいかに気まぐれであるかを思い知らされた」と語った。