伝統のスーパー4ドアセダンがPHEV化でさらに強力に「 ベントレー フライングスパー スピード」に試乗
■ 見た目は先代と大きく変わらず 出力はコンチネンタル GT スピードと同様 ベントレーはフライングスパーの新型を発表しました。フライングスパーは4ドアセダンで、2ドアのコンチネンタルGT、SUVのベンテイガと共にベントレーのラインアップを形成しています。ベントレーはイギリス・チェシャー州のクルーに本社を置いていますが、1998年からフォルクスワーゲングループの傘下に入りました。これにより、プラットフォームやパワートレインなどのリソースをグループ内で共有できるようになったことは、どちらかといえば小さなメーカーである彼らにとって大きなチャンスでした。 【画像】インテリアも従来同様の上質・高品質 資料によると、新型フライングスパーは4代目とのことですが、エクステリアやインテリアは基本的に従来型を踏襲しています。 本格的な改良を受けたのは中身のほうで、パワートレインやシャシーは大幅に刷新されました。 今回試乗したフライングスパー・スピードは、フライングスパーの中で最上位の仕様です。エンジンは従来のW型12気筒からV型8気筒となりましたが、モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド機構のユニットで、出力もトルクも増強されています。その数値は最高出力782ps、最大トルク1000Nm。ベントレー曰く「ベントレー史上最強の4ドアセダンであり、史上初の4ドアスーパーカー」だそうです。0-100kmの加速タイムは3.5秒で、この数値とパワースペックだけ見れば、たいそうなスポーツカーと言っても過言ではないでしょう。 ■ グループの強みを活かしたパワートレインと足回り そしてベントレー流のしつけ ベントレーでは「ウルトラパフォーマンスハイブリッド」と呼ぶこのユニット、実はポルシェのパナメーラ・ターボS E-Hybridと同型で、出力/トルクの数値も同じです。事実上「ポルシェのエンジンを積んだベントレー」であり、その表現にどれくらいの訴求力があるのかどうかはわかりませんが、ベントレーは“ベントレーのV8エンジン”と説明していて、実際ハイブリッド機構の制御を司るソフトウエアはベントレーのオリジナルとなっています。 運転してみると、確かにパナメーラとは異なるドライバビリティでした。スポーツカーのエンジンらしく高回転までよく回るパナメーラに対して、フライングスパー・スピードは力強いトルクのほうが主張してくるセッティングになっています。重厚感のある乗り心地とのマッチングもよく、しっかりと「ベントレーのエンジン」になっていました。もちろんアクセルペダルを深く踏み込めば、それまでのジェントルな様相から一転、圧倒的な加速感を伴ってもの凄い勢いで速度が上がっていきます。日本では確実に持て余すほどのパワーでした。 プラグインハイブリッドなので、バッテリーが満充電だと最大76kmまでモーター駆動によるEV走行が可能となります。試乗車も走り出してしばらくはエンジンが眠ったままでした。当然のことながら、その間はパワートレイン由来の騒音や振動がほとんどないので、ラグジュアリーサルーンにふさわしい静粛性や乗り心地が提供されます。 ところがエンジンが始動した後も、V8エンジンの音が遠くのほうでかすかに聞こえる程度で、静粛性にはほとんど変化がありませんでした。「エンジンが始動した途端に室内がうるさくなるなんてことは、ベントレーではあり得ません」と、エンジニアが誇らしげに語っていたのがいまでも印象に残っています。 ■ スポーツカーでありスポーティでラグジュアリー サスペンションは可変式ダンパーと空気ばねを組み合わせたエアサスで、これもまたパナメーラと共有しています。そしてパワートレインと同様に、エアサスを制御するソフトウエアはベントレーが独自に開発したものとのこと。パナメーラよりは乗り心地を重視したセッティングで、速度を問わず室内は常に快適です。 それでもワインディングロードに入ってステアリングを左右に連続して切るような場面では、3m以上もあるホイールベースがほとんど気にならないほどキビキビと向きを変えてくれます。これにはエアサスの他に、アクティブアンチロールバーや電子制御式LEDなども効果を発揮していると思われます。ボディサイズも車両重量もパナメーラとはまったく違うので、ベントレーの開発陣が走り込んでセッティングを行ったそうです。 「ベントレーは、スポーツカーであり、スポーティカーであり、ラグジュアリーカーでもある。これがすべてのモデルに共通する乗り味なのです」 とエンジニアが語っていたように、フライングスパー・スピードは見事にそうなっていました。
渡辺 慎太郎