タマゴは1日1個まで⁉厚生労働省が作りあげた「タマゴとコレステロール」を巡る誤解
タマゴ解放デー
かくして2015年に出た新しい基準では、コレステロールの摂取量の上限値が削除されるに至ったのです。それが発表された2015年3月28日は「タマゴ記念日」とか「タマゴ解放デー」と呼んでいいかもしれません。 しかしどうも厚生労働省は、諦めが悪いようです。コレステロールの摂取基準の削除がよほど悔しかったのか、2020年の改訂版では、次のような文言を追加してきました。 コレステロールについて、脂質異常症の重症化予防を目的とした量として、新たに200 mg/日未満に留めることが望ましい なにを言いたいのか分かりにくいですが、要するに「脂質異常症」と診断されたひとは、コレステロールの摂取量を1日200mg以下にするべきだ、と言ってます。タマゴ1個分にも満たない量です。 ところが脂質異常症の潜在患者数は、3000万人とも4000万人とも言われています。脂質異常症の基準値は、LDLコレステロールが140以上、中性脂肪(空腹時)が150以上、HDLコレステロールが40未満です。 厚生労働省的には、これだけの人数の国民に、いったいどんな食事を食べさせたいのでしょうか。しかも同じ「日本人の食事摂取基準(2020年版)」のなかで、「良質な動物性タンパク質」を十分に摂りなさい、とも言っています。そんな献立を作れと言われたら、ベテラン管理栄養士でもお手上げでしょう。 だからまあ、お手本の献立を厚生労働省が示してくれるまでは、あまり気にせず「タマゴは食べたいだけ」食べていればいいのです。 『「3日前からの断酒」で数値が改善⁉肝機能検査で注目すべき「AST」と「ALT」について知っておくこと』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)