タマゴは1日1個まで⁉厚生労働省が作りあげた「タマゴとコレステロール」を巡る誤解
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第23回 『基準範囲内でも動脈硬化のリスクが…「総コレステロール値」は数値ではなく「ココ」を見よ! 』より続く
タマゴは1日1個まで?
むかし、といってもそんなに古い話ではありません。平成のことです。 当時「健康のため、タマゴは1日1個までしか食べてはいけない」ということが、大真面目に語られていました。憶えているかたも多いことでしょう。なかには、いまでもそう信じているひとがいて、好きなタマゴ料理を我慢しているかもしれません(お気の毒に)。 厚生労働省は国民にたいへん優しいのか(お節介なのか)、5年ごとに「日本人の食事摂取基準」というものを発表しています。どんな栄養素をどれくらい食べろ、あるいは食べるなといったことを、エビデンスに基づいて細かく規定しています。 最近よく「エビデンス」という言葉を聞きますが、これは「研究論文によって根拠が示されている」といった意味です。ただし研究論文と言っても、実は玉石混交です。なにしろ医学・生物学関係の論文だけでも、世界中で毎年40万~50万件も発表されるのですから、あまり信用できないものも無数に混じっています。
デタラメすぎる「基準」
「日本人の食事摂取基準」は、高名な医学者や栄養学者が集まって、そういう論文の山のなかから「エビデンス」となり得る論文を選んで精査し、各栄養素をこのくらい摂っていれば健康でいられる(だろう)という枠組みを決め、文書にまとめたものなのです。 問題が起こったのは、そのなかの2005年版です。コレステロールの摂取量の上限が、成人男性750mg、成人女性600mgと明記されていたのです。 「日本人の食事摂取基準」は、あくまでも栄養素の摂取量の基準であって、個々の食品を「食べろ・食べるな」ということは一切書かれていません。しかしこのコレステロールの上限値を守るとすれば「タマゴは1日1個まで」という結論が出てしまいます。 タマゴ1個当たりのコレステロール量は、250~300mgです。しかし肉や魚などにもコレステロールが含まれています。タマゴを2個食べたかったら、肉や魚を大幅に減らす必要がありますし、3個食べたら、その日は肉も魚も諦めなければならなくなります。 ところがその後の研究で、このコレステロールの摂取基準には、実はほとんどエビデンスがないことが判明してきたのです。エビデンスに基づいて、エビデンスのない基準を設けていたのですから、なんだかなあ、という気がします。 しかも血中コレステロールの大半は、肝臓で作られるため、食事で取る分が多かろうが少なかろうが、大して影響しないことも分かってきました。