NYタイムズ「2025年に行くべき52の旅行先」に富山が選出された理由は?
◆市街地を縦横に走るLRT
一方、富山市の先進的なまちづくりを象徴するのが、市街地を走る路面電車(LRT=次世代型路面電車)だ。JR富山駅では改札を出てフラットな床面を歩き、そのままバリアフリーで路面電車に乗車できる。車両も、系統によっては旧型車両が残っているものの、低床型車両が多く導入されている。 富山の路面電車(富山地方鉄道の「市内電車」)は、現在、計6系統が運行されており、行先別で見ると富山駅を起点に市街地をぐるりと1周する環状線をはじめ、南富山駅前行、富山大学前行、岩瀬浜行があり、市街地の主要スポット間を回遊できる。 富山の路面電車は、元からこのような設計になっていたわけではない。富山市北部の岩瀬浜(富山港)へ向かう富山港線(富山駅―岩瀬浜間7.7km)は、元々はJRが運行する通常の鉄道路線だったが、北陸新幹線の富山駅乗り入れに伴う駅の高架化工事を機に2006年にLRT化された。また、現在の環状線も「市内電車環状線化事業」によって一部区間に線路を新設して、2009(平成21)年に環状線として運行が開始された。 さらに2020年に、富山駅北側に路線のある富山港線と南側の環状線などの路線を富山駅構内で接続し、直通運行を開始。このように路面電車をはじめとする公共交通の使い勝手を飛躍的に改善するなどした富山の取り組みは、今後も進むであろう少子高齢化時代を見据えた「コンパクトシティ」構想に基づくまちづくりの手本とされている。 富山の路面電車は乗ってみると非常に楽しく、なかでも富山港線は魅力的だ。終点の岩瀬浜では、4月から11月にかけて富山でしか味わえない「シロエビ料理」を楽しめるほか、岩瀬地区にはミシュラン掲載店が6店舗もあり、近年、グルメの街として注目されているという。 このほか、富山市の見どころとして、ニューヨーク・タイムズでも紹介されている隈研吾氏が設計した「富山市ガラス美術館」は必見だし、市街地から眺める冠雪した立山連峰は壮観だ。今後の旅先として、おすすめしたい。
森川 天喜(国内旅行ガイド)