3つの辺が全部「ピタゴラス数」の直角三角形が見せる「驚きの事象」…斜辺にある頂点の1つを揃えて並べたら、なんと「円」が出てきた
「数学的なセンス」とはなんでしょうか。 数学の問題を「正確に速く解く」うえで,計算技能に習熟することは大切ですが,「数学センス=計算力」では決してありません。数学的なセンスとは,数学を楽しみ,問いを掘り下げ,「数」や「図形」の世界についてより深く理解するための道筋を自らたどることができる能力です。 【画像】三平方の定理と、2つの2乗した数の和が成立する自然数の組み合わせを見る 〈理系に強い子ども〉に育てたい親御さんが増えていますが,「数学センス」を磨くことがその近道です。そしてそのエッセンスは,じつは「中学数学」に詰まっているのです! 中学3年間で学ぶ重要ポイントを抽出し,教科書では習わない視点でとらえなおす「新しい時代の新しい勉強法」をご紹介する『中学数学で磨く数学センス』から、数学を楽しみ,「数学センス」を磨くためのポイントをご紹介していきましょう。前半より取り上げている「三平方の定理」の性質について、さらに深めていきます。 *本記事は、『中学数学で磨く数学センス』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
a,b,cともにピタゴラス数の直角三角形
a, b, c をピタゴラス数として,a²+b²=c²が成り立つとする。両辺をc²で割ると, (a/c)²+(b/c)²=1² を得る。 これは,斜辺が1で2辺が分数で表される数(有理数)である直角三角形があることを意味する。 各ピタゴラス数(3,4,5),(5,12,13),(15,8,17),(7,24,25),(21,20,29)の斜辺も1としてみると,(3/5)²+(4/5)²=1²,(5/13)²+(12/13)²=1²,(15/17)²+(8/17)²=1²,(7/25)²+(24/25)²=1²,(21/29)²+(20/29)²=1²が成り立つ。 これらの長さの辺をもつ直角三角形を,斜辺の1つの頂点が重なるように描くと,何が見えてくるだろうか?
円が見えてくる!
斜辺が1で2辺が分数で表される数(有理数)である長さの辺をもつ直角三角形を,斜辺の1つの頂点が重なるように描くと,円が見えてくる。ここで,この頂点を原点において座標平面上に置くと,ピタゴラス数は原点を中心とする半径1の円の円周上にあるx座標とy座標がともに有理数である点に対応する。 なお,座標平面上でx²+y²=1を満たす点全体は,原点を中心とする半径1の円を描く。このような円を「単位円」とよぶ。 逆に,座標平面上で,x²+y²=1を満たすx座標とy座標がともに有理数である点(m/n, l/k)があるとする。 (m/n)²+(l/k)²=1が成り立つので(km)²+(nl)² =(nk)² であり,ピタゴラス数(km, nl, nk)が対応する。 *数学センスを磨くポイント* ピタゴラス数は, 座標平面上で x²+y²=1を満たすx座標とy座標がともに有理数である点に対応する。 さて、続いては、中学数学で、ピエール・ド・フェルマー(1607~1665)が提唱した難問として知られる「フェルマーの最終定理」を検証してみよう。 中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法
花木 良(岐阜大学教育学部准教授)