発行可能株式総数が「多すぎる」場合のデメリットとは?会社設立時に決める「株式の数」について【司法書士が解説】
会社設立における「発行する株式数」と「発行可能株式総数」の設定は、会社の未来にかかわります。発行する株式数と発行可能株式総数はどのような意味を持つのか。また、設定時の具体的なポイントや、その設定が会社運営にどのような影響を与えるかについて、加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
株式と会社運営
株式とは、会社が出資者(株主)に対して発行する有価証券であり、株主はこれを通じて会社の所有権や配当請求権を持つことができます。 「発行する株式数」とは、設立時に実際に発行される株式の総数を指します。これにより、株主構成が確定し、議決権や配当割合が決まります。 「発行可能株式総数」は、会社が発行できる株式数の上限を示します。この数を定款に明記することで、将来的な増資や新株予約権の発行など、柔軟な資本政策を可能にします。
発行する株式数の設定 ~現実的な株主構成を確立する
1. 出資比率に基づく株主構成 発行する株式数は、株主の出資比率を正確に反映する形で設定する必要があります。 例)資本金100万円、1株あたり1万円の場合 ・株主Aが60万円出資→60株(60%) ・株主Bが40万円出資→40株(40%) 公平性を確保するため、株式数の設定は出資比率に基づくことが基本です。 2. 株式価格(1株の価格)を現実的に設定 1株の価格をどう設定するかは、資本金額や出資者の負担に影響します。1株の価格が高すぎると少数株式で構成され、のちの株式分割が難しくなる可能性があります。一方、価格が低すぎると株式数が過剰になり、管理が煩雑化します。
発行可能株式総数の設定 ~成長への柔軟性を確保する
1. 発行可能株式総数を多めに設定 非公開会社において、 発行可能株式総数は、設立時に発行する株式数より多めに設定するのが一般的です。これにより、将来的な増資やストックオプションの発行がスムーズになります。 例)設立時に100株発行する場合 ・発行可能株式総数を1,000株に設定すれば、将来的に株式を追加発行する余地を確保できます。 2. 増資や株式分割の柔軟性を担保 会社の成長や資本政策の変化に対応するためには、発行可能株式総数に十分余裕を持たせておくことが重要です。この数をあとから変更するには株主総会の特別決議が必要になるため、初期設定段階で余裕のある数に設定しておきましょう。