「よその家族はみんな幸せそうで、耐えられない!」レスで自己肯定感を喪失した44歳夫。SNS時代の「理想の夫婦像」とは
レスと自己肯定感の関係
白尾さんが語る「満たされなさ」には、レスによる自己肯定感の低下が深く関わっていました。 「自分ではそれなりに仕事でも成果を出しているし、子どもたちのことも支えている。でも、家に帰って妻の無関心を感じると、自分の価値がわからなくなる時が増えていきました」 一見、仕事に充実しているように見える白尾さんですが、妻から愛されていないという感覚が、彼の中に強い自己否定の念を生じさせていたようです。かつては頼りにされていたと感じていた白尾さんも、次第にその感覚が薄れ、どこか自分が不要な存在とさえ思うことがあったといいます。 「会話レベルでも求めることさえも怖くなってしまうんです。拒絶されるかもしれないという恐れが、自分から距離を置く悪循環に陥っていました」 家族と過ごす場所で、自分の存在が薄れていくような感覚は、社会的な成功や友人関係だけでは埋められない虚しさを生み出します。白尾さんが抱く孤独感は、日本の男性が家庭で「夫」としての役割を求められ、自分の価値をパートナーとの関係に重ね合わせてしまうことで、いっそう深まっているのかもしれません。
SNSがもたらす理想の夫婦像との比較
白尾さんが自分の家庭について感じる何か足りないという思いは、SNSで理想的な夫婦像を目にするたびに、さらに強まってしまったと言います。 「妻も私もSNSをよく見ているんです。特にフォローしている投稿を見ていると、僕たちが足りないものがそこには全部詰まっている気がしてしまったんです」 SNSには仲睦まじく寄り添い合う夫婦の姿や、完璧な家族の瞬間が切り取られ、彼らの日常として発信されています。何気ない「いいね」やコメントの一つひとつが、理想の家庭を証明するものとして認識され、白尾さんにとっては、自分たちがそれとは違うと感じるたびに、自信が削られていくようだといいます。 「仕事も頑張っているし、たまに休日には家族で出かけたりもしている。でも、あのSNSで見るような楽しさや仲の良さが、僕たちにはどうしても感じられない。家族のために努力しているはずなのに、それがどこか空回りしている気がしてきて、次第に重荷に感じてしまったんです」 彼にとって家庭は安らぎの場であるはずが、SNSで目にする他人の姿が、自分たちの日常に「不十分さ」を突きつけるかのように映ることが増えていきました。 どれだけ家族のために尽くしても「これでいいのだろうか?」と考え込んでしまう日々が、次第に白尾さんを精神的に追い詰めていったようです。