『PICO PARK 2』開発秘話を聞く。協力ゲームだけどプレイヤーにギスギスしてもらいたかった? トライアンドエラーをくり返して達成感を味わえるものに
2024年9月12日にNintendo Switch、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)にて発売された『PICO PARK 2』。 【記事の画像(11枚)を見る】 『PICO PARK 2』は他プレイヤーと協力しながらパズルを解いていくアクションゲームだ。前作『PICO PARK』からステージ数やミニゲームが追加され、クロスプレイも可能となった。 2024年11月28日には前作『PICO PARK』と『PICO PARK 2』がセットになったNintendo Switchパッケージ版『PICO PARK 1+2』も発売予定だ。 今回、『PICO PARK』シリーズの生みの親であるTECOPARKの三宅俊輔氏と、『PICO PARK 2』の開発協力をしたジェムドロップ・北尾氏に話を聞くことができた。開発中の出来事やシリーズの展開など、今後の活動方針を聞いたインタビューをお届けする。 三宅俊輔(ミヤケ シュンスケ): TECOPARK 代表取締役、ゲームデザイナー。『PICO PARK』シリーズの開発者。(写真左・文中は三宅) 北尾雄一郎(キタオ ユウイチロウ): ジェムドロップ代表取締役、スタジオディレクター。(写真右・文中は北尾) 「もっといろいろなステージで遊びたい」との要望に応えて『2』に着手 ――まずは、『PICO PARK 2』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。: 三宅: 『PICO PARK』はオンライン対応にする前までなかなか売り悩んでいたのですが、その期間は何か別の協力ゲームを開発しようと思っていたんですよ。 ――最初から続編を考えていたわけではなかったのですね。 三宅: 協力ゲーム自体は作るつもりでいました。 『PICO PARK』が売れ始めてから、「もっといろいろなステージで遊びたい」という要望が多かったので、新作用にと思っていたものもすべて入れ込んで『PICO PARK 2』にしよう、と開発を始めました。 北尾: 2021年11月ごろでしたよね? 『PICO PARK 2』の話が出たのは。 三宅: そうだったと思います。そもそも、 『PICO PARK』は僕がC++でフルスクラッチで書いていたのですが、さすがに『PICO PARK 2』を作るならもうひとりではやりたくないぞ、と思ったので(笑)。前作をUnityに移植することから始めたんですよね。それでUnityを使える会社を……ということで伝手を頼っていたら、ジェムドロップさんを紹介していただいたんです。 北尾: 個人開発者や小規模開発共通の悩みだとは思うのですが、続編を作り始めると新しいタイトルを作る時間がなくなってしまうんです。三宅さんはほかにもやりたいことがたくさんあったみたいなので、ジェムドロップのほうで負担できるところは負担しよう、となりました。 ――ということは、新作も考えているものがあるということでしょうか? 三宅: もちろんあります。協力ゲームとして考えていたものは全部 『PICO PARK 2』に注ぎ込みましたけど、インタラクティブミュージックに近いものは作っています。僕がプログラミングとデザインを担当しつつ、アニメーターと作曲家もいて、3人で作っています。じつはこっそりと今年(2024年)の11月に開催されるとあるイベントに出展しようと思っていて。何も告知していないですけど(笑)。 2~8人プレイ専用の協力型アクションパズルゲーム『PICO PARK』。三宅氏が個人で制作し、2016年にSteam版が、2019年にNintendo Switch版がリリース。発売から3年間は1000本の販売本数だったものがオンライン対応し、YouTubeなどで火がつき、爆発的な売上を記録。2024年11月現在で、全世界累計販売本数は500万本を突破している。 3ヵ月ごとに進捗を確認しながら開発に取り組んだ ――北尾さん的には、三宅さんと組んで本作の開発に取り組むことをどう思っていましたか?: 北尾: それこそ、こうしてお仕事をさせていただく前に、 『PICO PARK』の発売前に、インディーゲームのイベントなどで会ってお話はしているんですよね。お互い覚えていないんですけど(笑)。 三宅: 覚えてないです(笑)。 北尾: 『PICO PARK』の試遊台では、8つのコントローラーがズラッと並べてあったんですよ。8人集まって遊んだら楽しいんだろうなと思いつつ、やっぱり8人が集まるという機会ってなかなかないじゃないですか。「絶対におもしろいだろうけど、オンライン非対応では難しい部分もあるだろうなあ」と思っていただけに、いざ『PICO PARK』が発売されたあとオンライン対応されて、販売本数が100万本を超えて、そして続編のお話をいただけたときは本当にうれしかったですね。「あ、やっぱりおもしろいよね」と確信に変わったというか、よかったなという気持ちがありました。 あとは、三宅さんがエンジニアとしてひとりでゲームを作っている部分にも共感しました。僕もエンジニア出身で、ドット絵も打っていたし、それこそDTMで耳コピ程度の曲作りもしていたので。お話を聞いてすぐ「やりましょう」となりましたね。 ――それで、まずはフォーマットを作るために前作をUnityへ移植することから始めたのですね。 北尾: はい。 『PICO PARK』は三宅さんがひとりでソースコードを書いているので、それこそ“秘伝のタレ”みたいなものも多くてですね……。 三宅: Unityの物理エンジンで再現できないものもあるんですよ。たとえばキャラクターがほかのキャラクターの頭の上にぽん、ぽん、と何段も乗っかって移動する動きがあるのですが、ああいう多段で慣性も込みの動きはUnityで試したのですが無理でした。 北尾: Unityにはある程度アセットというか、“Rigidbody”という簡単に動きをつけられるシステムがあるのですが、三宅さんが言ったような動きや 『PICO PARK』における特殊な挙動については自前の物理計算を組み込まないとダメですね。 三宅: 『PICO PARK』はけっこうシンプルに見えるゲームなのですが、真似しようと思っても再現できないのは強みですね。それで類似系のゲームがあまり出ていないのかもしれません。まぁ、そのぶんUnityへの移植はたいへんだったのですが……。 それでスケジュールが読めなかったので、本作は少し特殊な作りかたをしているんです。ふつうはリリース予定日を決めてから、逆算してマイルストーンを組んでいくと思うのですが、今回そういうのはとくに設けなかったんです。「だいたいこのあたりまでにこのシステムまわりを終わらせましょう」みたいな、ざっくりとした目標はありましたが。 北尾: その都度、進捗を確かめ合って3ヵ月ごとの目標を設定していくという感じでしたね。「ここまで終わったから、では3ヵ月後までにはここまでを」みたいな。 三宅: 大きい会社だと複数の開発タイトルがあって、それぞれ被らないようにリリース日を設定しないといけないからこんな方法は取れないでしょうけど、うちは 『PICO PARK』だけでしたし。ありがたいことに前作が売れてくれたので、切羽詰まってなかったというのもあります。 それで、何となく終わりが見えてきたね……というのが今年(2024年)だったわけです。 北尾: この3ヵ月ごとにというのは、時期によっては緩やかな感じで、時期によっては濃密なコミュニケーションを取ってというふうに、いい意味で柔軟に取り組めたように思います。まあ、開発の後半になればなるほど、コミュニケーションの密度は上がっていきました。 『2』はトライアンドエラーをくり返して達成感を味わえるものにしたかった ――『PICO PARK 2』を開発するにあたって、とくに追加したかった要素はありますか?: 三宅: ひとつは、“ダークモード”の実装ですね。僕は対戦ゲームでギスギスするのが嫌で……どちらかが負けて不機嫌になったら気まずいじゃないですか。だからそういう雰囲気にならないように、いっしょに達成感を味わえる協力ゲームを作ろうと思って、そもそも 『PICO PARK』を作ったんです。 でも結果として、Steamのレビューを見てみると「これは“友情破壊ゲーム”だ」とか「このゲームで友人を失いました」とか「友だちは俺のことをみんな嫌いになった」とか、そんな評価が多くて(笑)。友だちどうしでイジり合いとか、ツッコミをしたりとか、そういう遊びかたをする人が多かったんです。 ――意に反した遊ばれかたをされてしまったのですね。 三宅: ユーザーさんから“サイコロジカルホラー”とタグを付けられたりもしました。 『PICO PARK』のプレイヤーさんからは、「なぜ『PICO PARK』がサイコロジカルホラーなんだ?」って不思議がられたりもしましたね。 ――それは弱りますね。 三宅: とはいえ、そういうものを求めているユーザーさんもいるようだし、いっそのことそちらの方面に舵を切ってみるかということで実装したのが“ダークモード”です。“ダークモード”はより高難度になっていて、騙し討ちや即死トラップなどが追加されることで、さらなる協力度合いが試されるモードではありますね。 そういう意味では、『PICO PARK』より『PICO PARK 2』のほうがプレイしていてストレスが溜まるかもしれません(笑)。チャレンジングな調整ではありました。『PICO PARK』はある意味で人にやさしいゲームだったのですが、『PICO PARK 2』はツッコミ合いやいじり合いが生まれやすい。それを究極的に煽ったのが“ダークモード”ですね。 『PICO PARK』は、2、3時間遊んで、「ああ、楽しかった。これで終わろう」というゲームにしたのですが、『PICO PARK 2』はもうちょっとがんばらないとクリアーできないようにしたかったんです。『PICO PARK 2』は、もう少し時間をかけてじっくりと遊べるものを作りたかった。トライアンドエラーをくり返して達成感を味わえるものにしたかったんです。 ――『PICO PARK 2』にあたっては、とにかくいろいろな要素を盛り込んだのですね。: 三宅: そうですね。 『PICO PARK 2』ではキャラクターどうしがぶつかったらダメなステージとかも作りましたね。図らずも新型コロナウイルスを彷彿とさせるステージになりましたが……。逆にそれも遊びになるということですね。 とにかくいろいろと考えました。今回真上視点のステージもあったりして、「真上視点でできることはなんだろう……」というのは、とにかく考えました。 あと、絶対にフレンドリーファイアはやりたかったです! 絶対にギスギスする要素ですね。逆に『1』のときはそういうフレンドリーファイアを入れるとギスギスするから入れなかったんですよ。『PICO PARK 2』はちょっといいかなと思いまして。 ――存分にギスギスしてもらうためですか? 三宅: すべてのステージではないですが、そうですね。やはりこういうゲームにおいて、死に際って大事だと思うんです。「お前何やっているんだよ」みたいな会話や笑いが生まれる部分なので、いろいろな“死にかた”を用意しました。ちょっと“初見殺し”的なステージもあったりします。 とはいえ、それもメリットデメリットがありまして。死んでしまうとやり直しになってしまう。「ここからやり直さなければいけないのか?」という。それで、ステージによってはチェックポイントを用意して、やり直しになるべくストレスがかからないように調整しています。 『3』は考えられないが、“水滴みたいなもの”は出るかも? ――あと、本作から追加された要素としてクロスプレイが挙げられますね。開発はたいへんでしたか?: 三宅: 技術的な面では、想定より時間かかりませんでした。 北尾: Photon Engine(フォトンエンジン)という、ドイツ製のオンライン用のエンジンがあって、 『PICO PARK 2』はそれを使っているんです。 三宅: そうそう。やはりクロスプレイを実現するならサーバーを借りなければならないし、ここは他社さんに頼ったほうがいいなと思ったので。そのおかげか、予想よりは手こずらなかったです。 ――続編を作るに当たって、やはりクロスプレイは取り入れたかったのですか? 三宅: そうですね。ユーザーの利便性を考えると入れたほうがいいだろうなと思いました。プラットフォーム間でプレイヤー数に偏りが生まれるのも嫌でしたし。 あと、これはぜひともお伝えしておきたいのですが、オンラインまわりで『1』から進化した点がひとつありまして。前作ではオンライン対応した後も、1台のゲーム機からひとりしか参加できなかったんですよ。 ――ああ、家族で1台しかないと、オンラインだとひとりでの参加だったのですね。 三宅: はい。それが 『PICO PARK 2』では1台で最大7人まで参加できるんです。Aさん家族とBさん家族で集まってオンラインでいっしょに遊ぼうみたいなことができます。これは『PICO PARK 2』でやりたかったことのひとつですね。 ――複数の家族が集まってオンラインでプレイするというのは楽しそうですね。: 三宅: あと、入れたかったけどあきらめたものもあります。レベルエディターとか。 北尾: ありましたね。いわゆる『スーパーマリオメーカー』みたいに、自分でステージを作れる機能ですね。 三宅: システム的にも、コンセプト的にも、調整がいろいろと難しくてあきらめました。 『PICO PARK 2』も、『PICO PARK』同様に、各ステージはギミックや攻略が一点もののステージばかりなのですが、どこまで汎用化するかが難しかったんですね。「1点ものの遊びをいろいろ作りたいけど、この機能はない」となったらユーザーさんにとっても残念なことです。中途半端なものになってしまうという心配もありました。 ――なるほど。『PICO PARK 2』には60ステージが収録されていますが、『1』同様一点ものなのですね。 三宅: 『1』を遊んだことがない人のために前半は既存ギミックを活用して 『PICO PARK』らしさ感じてもらうステージが出てきますが、途中からそうですね。ステージごとに「やっていることが違うな」と思っていただけるように、基本的に体験は変えたかったので、そこは踏襲しています。ギミックの仕組みを理解するステージ→それを応用したステージ、という感じで、同種のステージが続くこともありますが、3つ同じ体裁のステージが続くことはありません。『PICO PARK 2』でも飽きさせないように、1点ものにしたかったというのはあります。 ――『PICO PARK』のときは48ステージで、「まだ、やりたいことがあるかも」みたいなことをおっしゃっていましたが、『PICO PARK 2』を終えていかがですか? アイデアがつぎからつぎへと湧き出た感じですか? それとも生みの苦しみがあったのですか? 三宅: 悩みましたよ! 最初に各ステージのコンセプトを出して、「これ違うかな」という感じで適宜減らしていきました。じつは最初は100ステージを目指していたんですよ。 ――100ステージですか。 三宅: 「これはおもしろくないな」と少しずつ削っていって、「これ以上は削れないな」という感じで(アイデアを)絞りました。 ――ということは、協力プレイのギミック1点ものは、三宅さんの中でやり尽くした感がある? 三宅: そうですね。とりあえず絞り切った感じはあります。これは記事に書いてほしいのですが、いまは 『PICO PARK 3』は考えられないです。 ――(笑)。 北尾: リリース直後のラジオ番組でも“絞り切った”と発言していましたね(笑)。 三宅: ただ、これも書いてくれていいのですが、 『PICO PARK 3』は作れないけれど、まだ、“水滴みたいなもの”は出るかもしれません。 ――”水滴みたいなもの”……ですか? それはどのようなものになるのですか? 三宅: まだ内緒です! 北尾: 僕たちまだまだ忙しいんですよ、とだけ言っておきます(笑)。 幅広い層に訴求するために幅広い層の開発陣を起用 ――個人的には、三宅さんとジェムドロップのスタッフの皆さんが、どのようなやり取りを経て『PICO PARK 2』を開発していたのかが気になります。ほぼ個人開発だった『1』から、集合体制へ移行して、開発はスムーズだったのですか?: 三宅: 開発の実働部隊は5人でした。デイレクション、ゲームデザインがメインの私、実際の遊びを作ってくれているプログラマーはメインがふたりでサポートが1名、それにデザインアーティスト1名、SEがひとりという構成でした。BGMなどは外部の作曲家に依頼しました。 で、僕が「各ステージはこういうステージで、こんなコンセプトで、こういうギミックを作ってください」という感じでオーダーを出して、ジェムドロップのスタッフの皆さんに形にしてもらっていました。 作ってもらったギミックを使って自分でレベルデザインしたステージが多いですが、たとえば、僕が「シューティングをやりたいんだけど、盾役と攻撃役がいて、たまに盾役がちゃんとガードしないと防ぎきれないような攻撃がくるようにしたい」とかアイデアを投げて、細かい攻撃の仕様とかはジェムドロップさんにお任せする、といったこともありました。そこで仕上がってきたものに対して、ああだこうだと調整していく感じです。 北尾: もうちょっとお話しすると、ジェムドロップ的にも狙いがあって、本作には昔のタイトルへのオマージュっぽいステージもあるので各世代のスタッフを混ぜたかったんです。それで、50代のベテランスタッフと30代の中堅、20代の若手スタッフという開発体制で臨みました。ベテランスタッフは古いシューティングのネタとかがわかるし、若手は元ネタを知らなくても楽しめるようにしてくれるし……という感じです。 そもそも『PICO PARK』自体が遊ぶ人のレンジが広くて、小さいお子さんから、それこそ50代、60代の方も遊んでいるハズなんですね。それで開発側もなるべく幅広い年齢層にしました。 ――さらに幅広い年齢層に楽しんでもらおうと。 北尾: そうですね。チームビルディングはそういうふうに考えていました。で、僕は何をしたかというと、三宅さんとの折衝とスケジュール管理や現場に伝えにくい事柄を噛み砕いて伝えるなどの調整ですね。まあ、広がった夢をどうリアルに落とし込むかの調整役でしょうか。 ――ぶっちゃけ、『PICO PARK 2』の開発の日々はどうだったのですか?: 北尾: 僕、部屋から出ましょうか?(笑) 三宅: いえいえ(笑)。とてもスムーズでしたよ。スタッフの方と直接お会いしたのは3、4回くらいで、あとはリモートでしたね。やり取りは、僕はチャットは何か面倒くさいと思ってしまうタイプなので、すぐ電話していました。 最初は会社に電話して、「プログラマーの◯◯さんに代わってください」とお願いしていたのですが、その手間も省きたかったので、ヘッドセットを用意してもらって、チャットツールをつないでいました。 北尾: とにかく会話は多かった。ホットラインでほぼつないでいました。通常の開発だとあり得ないですね(笑)。 三宅: 『PICO PARK 2』はオンラインゲームでもあるので、とりあえずいっしょに触ってみて、ディスカッションしていました。「ここがわかりにくい」とか「ここはこう思うんです」みたいなやり取りはしやすかったですよね。このへんはオンラインゲームならではのスムーズさだったかと思います。 とにもかくにもいい感じで開発できました。 『PICO PARK 2』がプレイステーションで出ない理由は…… ――本作はIndie Worldの配信直後に即リリースという形でしたが、最初からこの形を想定していたのですか?: 三宅: いや、開発段階ではまったく想定していませんでした。始めは秋くらいに出せたらいいなと思っていたんです。Indie Worldで発表して、ちょっと調整をしてリリースしようと思っていました。そうしたら任天堂さんから「マスターアップしているのなら出しましょう! そのほうがインパクトありますよ」と勧められたので、「ではそうしようか」となり、あの流れになりました。 ――配信しての反響はいかがですか? 発表して即配信というのはインパクトが大きくて、世界中のたくさんの方に遊んでもらっているのではないかと思うのですが。: 三宅: 前作のときはドカン、と売上が伸びるときがあったのですが、 『PICO PARK 2』は毎日一定数売れ続けてくれている、という感じですね。おそらく前作で『PICO PARK』がどういうゲームかわかっていただけて、認知度も上がってきたからではないかと思います。 ――以前インタビューで、『PICO PARK』は海外の売上比率が95%くらいとおっしゃっていましたが、『PICO PARK 2』ではどうなのですか? 三宅: 『1』ほどではありませんが、海外比率は高いです。とくに中国の方が遊んでくださっていますね。 『PICO PARK』も中国、北米の順に売れていたのですが、『PICO PARK 2』も同様です。カジュアルにオンラインでわちゃわちゃできるというのが、相変わらず評価していただけているようです。ほかに似たようなゲームがなかったということで、遊んでいただけたのかなと。 ――価格が980円で、友人にも勧めやすい値段帯かなと思いますが、ここは意識して設定したのでしょうか? 三宅: そうですね。前作は520円でほぼワンコインだったのですが、ステージや新しいモードも追加したし、クロスプレイにも対応したしということで値上げさせていただきました。ただ、やはり3桁には抑えたいと思っていました。 ――ところで、『PICO PARK 2』はNintendo Switch、Xbox、Steamでリリースされますが、プレイステーション版の発売は予定していないのですか?: 三宅: Steamの掲示板で問い合わせがあってそれに答えてもいるのですが、現状予定はないです。理由はわかりやすくて、プレイステーションはコントローラーが8個つながらないからです。それだけです。プレイステーション版も含めてのクロスプレイは技術的な面では無理だったわけではなく、ただ僕のこだわりですね。ある意味でエゴです。 北尾: 『PICO PARK 2』は最大8人でプレイできるのですが、ローカルプレイをするとなると、プレイステーションだけ最大プレイ人数が減ってしまうんです。 三宅: オンラインプレイではなく、家に8人集まってプレイする人たちがどれだけいるのかはわかりませんけれど。でも、僕はそこを大事にしたかったんです。 北尾: 実際、ジェムドロップの開発チームもチェックを兼ねてプレイすることは何度もあって、そのときは8人横並びで遊ぶんですよね。そして、それがいちばんおもしろい! 騒げるし、顔を見てお互いにリアクションを取り合うのってやはり盛り上がるんですよ。オンライン対応する前の『PICO PARK』のコンセプトがまさにそれだったので、「ではプレイステーション版を出さないのは仕方ないですね」と、そういう方向で進みました。 三宅: ですので、ソニーさんに「ぜひプレイステーションのコントローラーを8個つなげられるようにしてください」とお願いしたいですね(笑)。 北尾: ご検討よろしくお願いします! ――さて、2024年11月には『1』と『2』がいっしょになったNintendo Switchのパッケージ版が発売されます。こちらはどのような経緯で制作が決定したのでしょうか。: 北尾: これは確か、僕のほうから提案させていただいたものですね。「売れると思うのでどうですか」と。 弊社ではパッケージ版も手掛けているので、店頭に並ぶメリットはわかっていて。ほかのソフトをお求めになって来店されたユーザーさんに、「おもしろそう」と手に取ってもらえる可能性もあるわけです。ただ、最初のころは三宅さんの反応は微妙でしたね(笑)。 三宅: もちろん、出せるということであれば出したかったです。ただ、パッケージにするとどうしても値段が高くなってしまうし、ダウンロード版との価格の差額が何となく腑に落ちなかったんです。本当に需要があるのかなと少し心配でもありました。しかし、その後、北尾さんだけじゃなく任天堂販売さんからも勧められ、「それなら出しましょう」ということになりました。 ダウンロード販売ではリーチできない層に届けられるのは、僕としてもうれしいです。年末年始に皆さんが楽しむタイトルの候補の一本に入れていただけたらと思っています。Nintendo Switchは年末年始はインディーゲームタイトルがとても充実しそうなので、『PICO PARK 2』も負けじと注目してもらえるといいなあと期待しています。 ――では最後に、ファンの方へ向けてメッセージをお願いします。 北尾: 本作は文章をほぼ見ずに遊べるゲームなので、非常に広い年齢層の方々に遊んでいただけるのではないかと期待しています。子どもどうしでも、大人と子どもでも……。大人どうしなら、お酒を飲みながら遊ぶというのも楽しいかと。人と会う、遊ぶキッカケになればと思います。前作をプレイした方も、そうでない方も、本作をプレイして楽しんでいただけたらうれしいです。 三宅: アイデアを出し切って、前作からだいぶボリュームアップしたので、友だちや家族とたくさん遊んでほしいですね。北尾さんが言ったような、飲み会の余興のひとつとして遊ぶのも楽しそうです。それと、ダークモードはギスギスしてしまうかもしれないので、いっしょに遊ぶ人は選んだほうがいいかも……というアドバイスを残しておきます。